防御領域・逆禍【スクトレア】を斬り裂く刃
「これで、また1枚! えーっと今、何枚目だっけ――まあ、いいや。どうせ全部ぶった斬っちゃうんだから、現時点で何枚断ち切ったとか関係ないか」
レシノミヤの街と
その背中に跨った小柄な少女――ミズホは、疾すぎる
顔を上げて少女は次の目標を見定める。少し先に見えるのは、遙か上空から伸びて
「次のバリアも近いな――お馬さん、頑張ってね」
そう呟いた少女の役目は、
その時、少女と
まるで、漆黒の夜空を真っ二つに分割するかのような強烈な瞬き。
それは、3発目の
少女は遠くにそびえる
「――あんな恐ろしいものを、こんなに何度も連発できるなんて――」
ゴォンという轟音。ミズホは思わず振り返り、街の方向をちらりと見やる。
ミズホの遙か頭上を通り過ぎた滅閃は、その先にあるレシノミヤの街へと到達する寸前のところで、街を包み込む透明な紫の領域によって阻まれていた。
阻まれて、強引に捻じ曲げられたように歪む滅閃は、やがてその歪みに耐えきれなくなったように弾けると、幾重もの細い光の筋へと分かれて、散り散りになって周囲の山や木々に降り注いでいく。
「――ひえぇ――アレを完全に防ぐって、どんだけ――おっと、ゆっくり見てる場合じゃないか。急がないと――」
自分に言い聞かせるように呟き、ミズホは前へと視線を戻す。
眼前に透明で茶色のベールが見える。敵の展開する
ミズホは片腕を振り上げる。その手に握りしめているのは刀。鋭い切先に、僅かに反った刀身。闇夜を照らす月の光を反射したその刃の残像は、冷たく妖しい白銀の色。
疾走する
刃が、透明な茶色のベール――
ぶんっ、と勢いよくミズホは刃を引き抜く。それと同時に
「よしっ――また1枚っと! 残りは――えーと、まあいいや。
木々を掻い潜り、森の中を駆け抜けながら、少女は
○●
「――え? 残り何枚くらいかって? あなた自分で断ち切った枚数を数えてないの? そう――しっかりしてそうで意外に大雑把なのね。え、ええ、そうよ、残りあと少しだがら頑張って」
シエンは苦笑いを浮かべながら、
そこは、レシノミヤの街で最も高い場所である、ラピスタワーと呼ばれる塔の最上階。シエンとナルの2人の魔術師は、塔の頂上にある狭い領域いっぱいを利用して、直径10メートルはあろうかという大魔法陣を敷いていた。
大魔法陣は青白い光を放ち、夜の闇に覆われた塔の頂上を仄かな明かりに包んでいる。
ナルは集中したような表情で大魔法陣の中央に立ち、小さな声でぶつぶつと何かを詠唱をしていた。シエンの眼差しに気づいた彼女は顔を上げ、その意図を図りかねたのか小首を傾げる。
「あのミズホって
シエンの呟きに、ナルは呆れたように口を開けた。
「んにゃ――あの
『――聞・こ・え・て・る・ぞ、ナルさん』
「えっ、
どぎまぎしたように言い訳をしようとするナルにおっかぶせるように、ミズホは
『そんなことより、ナルさん――準備はどうです? 大丈夫ですか』
不意の問いかけに、すっとナルの表情が曇る。
「準備は――いける、と思う――けど」
途切れそうなナルの返答に、ミズホの声が訝しげに淀んだ。
『と、思う――って、なんか大丈夫そうに聞こえませんけど』
「正直――自信ないかな。今までだって、あたしの魔術は四天王には通用しなかった――
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