竜式魔術【ルハモマギア】
「あら、属性攻撃魔術に関してだけは、あなたの方が得意でしょ。それに――」
シエンはさっぱりとした口調で横から口を挟むと、背後からナルに寄り添い、前へと掲げられた彼女の腕をそっと握りしめた。
――詠唱の組立てと重なりは十分。魔力の
ナルの展開している魔術式を一通りチェックし終え、シエンは柔らかい口調で呟く。
「――なんだ、ちゃんと出来てるじゃないの」
「え、
「これなら、いける。私なんかが放つより、よっぽど確実な一撃をお見舞いしてやれるわ――なにせ、【最高クラスの実力を持つ、レシノミヤで最も優秀な魔術師】だものね?」
「え――ひえっ!?」
ナルの戸惑いがちな声は、その瞬間小さな悲鳴に変わった。
「あなた、召喚したお二人にそう自己紹介してたんですって?」
ひえぇ、と悲鳴を吐き出し終えた金髪の少女は、闇夜に浮かび光る
「も、もっちー!
『えっ? な、何の話――? 私、何も言ってないはずだけど――』
困惑したようなミズホの
「ヒトの話は最後まで聞きなさい。あなたの言いそうなことなんて大体わかるわ――おおかた、せっかく召喚した子たちに話を聞いてもらおうとして、自分の実力を盛ったとかそんなところでしょう?」
「うっ――、さすが
「いいじゃない――それで」
ナルの耳元で囁く、柔らかなシエンの声。
金髪の少女は息を呑み、前へと突き出している自身の腕を、優しく撫でる
「――それって、どういう意味――」
「レシノミヤで最も優秀な魔術師って名乗ってもいいじゃない。レシノミヤ魔術顧問の私が認めるのだから間違いないわ。だって、あなたは立派に
短く言葉を区切るシエン。ナルはちらと背後に寄り添う
肩越しに見たその瞳は冷たく、しかしその虹彩は燃えるように揺らめいて。
「しっかり、あなたの
シエンは言い聞かせるように呟くと、不意に唇を尖らせた。
「だいたいね――あの
『
シエンは魔術顧問らしく、まるで教え子へ教え諭すように、教鞭を執るかのようにすらすらと諳んじる。
「ええ、そうよ。
それは
つまり、身体の構造的に魔力の保有量が絶対的に少なく、瞬間的に強力な魔術を行使することができない人間という種族が唯一、時間をかけて詠唱を紡ぐことによって多大な
高位魔術師はふぅとナルの耳元へと息を吹きかける。驚いて思わず首を竦める
「もっとリラックスなさい、ナル。あなたにはやるべきことが――」
シエンが途中まで言いかけたその時、
『――お話中すみません! どうやら後方から敵襲みたいです――これは、
「もっちー! 敵が来たって――大丈夫?!」
不安げなナルの言葉に、ミズホ即座に答えた。
『大丈夫ですよ! バリアを断ち切る方を優先しますけど、もし追いつかれたら戦闘になると思うんで一旦、
――さーて、ライオンさん、もし私の邪魔をするようならぶった斬っちゃうよ!
と同時に、何度目かの
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