左腕の枷に封じられし【シノリアコ・エニア・エパナフォラ】
砂化の
両腕を持っていかれたのは想定外ではあったものの、腕の一本や二本失う程度のアクシデントなど大した問題ではなかった。事が済みさせすれば、
「――
「ふむ――では、連中に
サイカスはギリギリと歯を食い縛る。それは痛みがあるわけでも悔しさがあるわけでもなく、ただこの
「――その片足は
サイカスが
「――
来たか。随分と遅かったではないかと、サイカスは独りごちる。
そして、そもそも
「
サイカスは
「――拡がりては
青白い稲光がレーザーのように、闇夜を切り裂き、夜空を疾走するかのように迸る。
数十メートルはあろうかという巨体が、上体を仰け反らせる。ぐおおという獣が唸るような低い声と地響きとが、その振動で身体の表面から剥がれ落ちる砂塵とともにが周囲に広がっていく。
そして――【
滅閃の伸びゆく先にあるのは、レシノミヤの街。
建物を、人々を、そのすべてを呑み込み、砂化の呪いによって跡形もなく崩し去ろうとする、その滅閃は――。
街へと到達する間際のところで、ぐにゃりと曲がり弾かれた。
何かの力によって遮られた滅閃は、その極太のカタチを維持できずに、裂けるように幾重もの細い光の筋へと分かれ、レシノミヤの街の後方にそびえる山々へ照射されていく。滅閃の残滓によって撫でつけられた部分は、葉は散って木は朽ちていき、細長く伸びる砂の筋と化して、それらは山々へ次々と刻まれていく。
「な――に――?!」
サイカスは、何が起こったのかわけがわからず、声にならぬ呻きを漏らす。
絶対に防ぐことはできないと思われていた【
「馬鹿な――
○●
レシノミヤの街の外れにある小高い丘に独り立ちながら、少年はその金色の瞳で遥か遠くにそびえる
「ふ――、貴様のチンケな
そう嘯くアシャは、【左腕】を空へと掲げていた。
左腕には、先程までその手首に嵌められていた紫色の枷は存在していなかった。
左腕の枷は、
そして、枷から解き放たれた左腕よって、発動した
「左腕の紫の枷に封じられしは、【
左腕、その手の甲からは盾の形に似た紫色の魔法陣が浮かび上がっていた。
その魔法陣から、薄紫色の光が一直線に空へと伸び、遙か上空で傘状に広がって、レシノミヤの街全体を包み込んでいる。
「我が左腕にかかれば、街ひとつまるごと【
貴様のご自慢の
アシャがそう宣言したその瞬間、空が白に染まった。ゴォンという轟音とともに街全域が震え、続いて白いキャンパスに黒いインクを勢いよくぶち撒けたかのように空がまだらに揺れた。
天球を這う白と黒の光の筋は、【
「ふふ――無駄という事が解らぬか――ならば、それもよし。我が無限の
この防攻を愉しむかのように言い放つアシャの眼下で、
○●
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます