持ち物確認したと思っても意外とできてなかったりするよね

 ドラゴンにケーキを渡して約束通り場所を教えてもらった。ちなみにあの巨体の胃袋ではいささか小さすぎるケーキであったが本人は満足している様子だった。

 本当に近場でほぼ安全かつ、日帰りで帰れるのはとてもありがたい。ギルドに申請して明日にでも出発しよう。

 

 「はい、こちら国営のダンジョンになります。達成時には報酬金から保険金分の5%をいただきますがよろしいでしょうか?」

 「はい。大丈夫です」

 「ではこちらにサインをお願いいたします」

 

 この世界のダンジョンは何とも不思議で、入るたびに地形変わっていき、なおかつ配置されるお宝も違うものになっているのだ。なので同じ入り口でもなにかしら発見される。

 さらにダンジョンは2種類あって国が管理しているものとそうでないものがある。

 国が管理しているものはそのダンジョン付近に各国で開発、導入されている特殊な加工石、通称『守護石』が置いてあり、それがある付近10㎞内は一定量減った生命力を感知すると強制的に守護石までワープさせるというものだ。

 これにより初心者冒険者も死ぬことなくダンジョンに潜ることができる(死ぬことがないだけであるが)。そのかわりお宝を発見できてもあまりいいものでないことが多い。

 そしてもう一つは普通のダンジョン。こちらは国の整備が間に合っていない、または守護石を置いても意味がないものである。

 意味はないというのは一定量減らないと守護石は効果を発揮しない、つまり一撃で死ぬと意味がないのだ。場所により出てくる魔物、トラップの難易度も違うため国が把握はしているが管理をしていない、はいったらすべて自己責任である。そのかわりいいものが出やすい傾向にある。

 つまりいいものが欲しかったらそれ相応のリスクを負わないといけない。

 しかし今回はドラゴンの情報もあり、『行けば手に入る』とのことだったしきっといいものが出てくれるはずだ。


 「はい、承りました。こちら許可証になります。入念に準備をして挑んでくださいね」



 当日。許可証を門番に見せてダンジョンへと潜る。

 今回は遺跡系ダンジョンで各道に灯篭がある。洞窟系ダンジョン用に発光石を準備していたが使わなくてすみそうだ。

 中盾を軽く構えながら進んでいく。遺跡系は足場が安定しているが、少し道が複雑なため魔法でマッピングしないと迷ってしまいそうだ。

 少し歩くと前からパタパタと音がする。この音は

 「ウルフ系か!」

 三匹のウォーウルフがこちらめがけて走ってくる。

 即座に懐から手のひらサイズの灰色の球を取り出しウォーウルフの正面に投げつけ、それと同時に盾を正面に構える。

 構えたと同時に盾は僕の全体が見えなくなるくらいまで大きくなる。

 さらに投げつけた球はウォーウルフの手前に落ちるとそこから無数の鋭く太い針がでてきてウォーウルフたちの身体を貫いた。

 その針は僕のほうにも襲い来る。構えていた盾に当たる。衝撃を感じたが貫通することはない。

 10秒ほどするととげは収縮し、再び手のひらサイズの球になった。

 「よし!問題なさそうだな」


 これが僕のダンジョンでの基本的な戦い方だ。

 先ほどの針の出る球、『刺針球』といい、遠くに投げないと自分や味方を巻き込むし、平地だと簡単によけられてしまうため防衛用のトラップとして開発されたものである。

 しかし僕はこの盾がある。基本的な大きさは中盾程度だけど僕の魔力を消費してそれに応じた大きさに変化する。ダンジョンで手に入れた宝の一つだ。レア度は中の下くらいで、もう少し上のランクだとさらに形状まで自在に操れるものまである。

 あまり多人数でダンジョンに行かない、なおかつそこまで強くない敵とばかり戦う僕にはこれが確立した戦いだった。

 しかも今の二つはほとんど手入れをしなくてもいい。なんてすばらしいんだ。


 そんなで魔物を倒しながら順調に進んでいった。

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