第4話 悪役令嬢カラミティ? 衝撃!テスタロッサ家の真実
まずカラミティは自分に魔法の才能がないと知るや、母に懇願したのだ。
”自分をもっと鍛えててほしい”と。
ゲームの設定と違い”テスタロッサ家は非常におかしい”家である。
ゲームにおいては、よくあるただの上級貴族設定であったのだが、この世界では”個の異色の武力”を保持、国軍に加わらない形で戦果を挙げ、国を支えていた。
その異色の家の子であれば武を学ばない通りはない、男子ならば…。
そしてゲームと違う点の一つ、母は娘に愛情があった、10歳までは軽い運動とストレッチしかさせていなかった、貴族令嬢の娘には必要ないと思ったからだ。
それに嫌々やらせたところで意味はない。母は”やる気がなければ去れ”の人だったからだ。
だが娘の決意に満ちた瞳と、自分の圧力をかけたまなざしに目をそらすことなく向き合う娘に彼女は決意した、テスタロッサ家の技の伝授を。
そもそもテスタロッサ家の技はまだ戦の火が消えなかったころ、初代当主の弟が敗走し捕虜となり魔法を封じられ捕虜となった時に編み出されたものだった。
5年もの歳月、貴族とはいえ捕虜である彼は平民の兵士と同じように土木作業など過酷な労働を行わされ、いつ解放されるかわからない日々を過ごしていた。
そんな日々に倒れる者、自ら命を絶つ者も多い絶望の中、彼は立ち上がった。
毎日の過酷な作業で鍛えられた体と、人体に詳しい仲間に教えを請い、いかに破壊するかを学び、ついにその術を編み出した。
つぎに彼は、”絶望に負けて死ぬよりも戦って死ぬべきだ”と仲間たちを説得した。
最初は気でも狂ったか?と嘲笑されたが、共に働き貴族の位など関係なく過ごしてきた日々と、彼の瞳と熱意に次々と賛同者は増えていった。
看守に隠れながら互いに技を磨き、ついに警備が薄くなった日、彼らは立ち上がった。
収容所の監視の兵士を鍛え上げた技で倒し仲間たちと見事脱出して見せたのだ。
彼は仲間たちを連れ帰国すると数日家にとどまった後、己の技を昇華するべく、賛同し、ついてきてくれる仲間とともに未開の地にむかった。
道中、襲ってきた盗賊や他国の兵士を実験台にし、未開の地を目指した。
山に近い場所に村を作り、現れる魔物たちと戦い、対魔物用の技の数々も編み出したのだ。
己を鍛え、技を昇華し村を少しづつ広げていった、王国からものテスタロッサ家の分家として認められ領主にされた。
しかし彼は変わらず仲間と技を磨き、縁あって貧乏ながらも貴族の娘を妻に迎え、彼と彼の仲間たちの家系はひっそりと技を伝えていった。
ある時、テスタロッサ本家の者たちがはやり病で亡くなり、分家だった弟の家系の中から本家入りすることになり、当主となることになった。
未開の地から来た、蛮族の当主と言われたが彼らは気にしなかった。
目の前に立ちふさがるもの、すべてをまさしく”力で制した”のだ。
そして戦場でもそれはいかんなく発揮された。
本家の兵士が騎士として戦っている間に、当主自ら連れてきた仲間たちで別動隊を組み奇襲を仕掛け続けた。
彼らの拳や足は盾や剣など恐れず、フルプレートの騎士に一撃を打ち込むだけで倒し、槍を踊るかのように避け、襲い来る騎兵すら避けた瞬間その馬に飛び乗り騎手を絞め殺した。
魔法を避けるべく障壁を張ることもあったが、あるものはその健脚で距離を詰め、またある者は跳躍し魔法部隊の中に飛び込み蹂躙した。
”戦場でテスタロッサの旗を見たとき殺戮は始まっている”
と後世にも残る言葉だ。
テスタロッサ家は技を磨くことをひたすら続けた、さび付かせづ、なまらせずただひたすら愚直に後世に伝えるために。
カラミティの母は異色だ、本来ならば男児にしか継承されなかった技を本人の意志と天武の才と血のにじむ努力で見事修めた。
家族のだれもが認めざる得なかった。
そして彼女は男装し戦場に立つこともしばしばあった、故に実践的。
その姿を各国の者たちが見たことがある。
ある年、圧倒的な数の魔物の暴走(スタンピード)が起こった。
いくつかの国からの連合軍にテスタロッサ家の姿があった。
だがその数の多さから皆おびえ、恐怖し、死を覚悟した。
その時一人の者が軽やかに草原を歩くように進み出て兜を脱いだ。
誰もが気でもふれたか?と思った。
だが次の瞬間目を見張った、銀の髪を風になびかせ美しい女が立っていた。
足の速い魔物たちが迫る中彼女は駆けだした、先陣を切り、魔物たちを叩き潰していったのだ。
踊るように舞うその姿に膝をついていた兵士たちも立ち上がった。
戦女神が降臨された、だれもが武器を持ちテスタロッサ家の者たちが走り出すと続々と後追うように続いていった。
誰の顔も絶望の色はなく、ただ戦場に舞い降りた戦女神に続かんと瞳に強い意志を宿らせ突き進んだ。
かくして幾多の犠牲を出しながらも彼らは勝利した。
”戦女神のバルバロッサ”
その名は各国の者たちに知れ渡ったのだ。
そしてその彼女の才は見事カラミティの血に受け継がれていたのだ。
熱い血と決して屈しない魂。
バルバロッサは覚悟を決めた、娘が覚悟を決めたのだから____。
その日から修練の時は親子ではなく師弟となったのだ。
続!異世界転生したが姉が前世で知っていた悪役令嬢?だった。 黒猫Sin05 @sin05
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