第116話 サヤと神父

 ゆっくりとした足取りで現れたのはブラッドリー神父だった。明かりの届かぬ通路の奥からではその表情は読み取れない。

「こんなかわいい愛玩人形を飾るのはさすがに聖霊様への教えに背いてるんじゃないか?」

「信徒でもないあなたに聖霊様の教えなどと軽々しく口にしてもらいたくないですね」


「ここにこんなもん隠しているあんたなら村人や村の周囲に起きていることの真実を知っているんじゃないのか?」

「ええ、もちろんです」

 神父はやわらかいほほ笑みを浮かべた。

 あまりにも状況と言葉にそぐわない笑みだ。


「それなら、それで村を救ってやろうとはおもわないのか?」

「おかしなことを言いますね、村人たちは聖霊様の浄化の光を受け、救済されているではないですか」

 真っ当な返事が返ってくるなどと期待もしていなかったので、サヤは驚きもしなかった。ただ、目の前にいるこの男の考え方が尋常でないことを再確認したに過ぎない。

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