第112話 目覚めぬポメラとサヤの決意
その夜、サヤは深く眠りにつくポメラの傍らにいた。
すっかりと短くなった髪の違和感は拭えない。手持無沙汰に毛先をつまんだ。
「起きたらおまえに整えてもらうからな」
ポメラの頬に触れる。やわらかい感触が手に伝わってくる。
ここに運び込んだ時よりも表情は随分と和らいだようにも見えるが、いまだに目を覚ます様子にない。
窓から差し込む月明かりの下、サヤはこれまでの出来事を振り返っていた。
『錆』の存在である「蟲」と、聖霊に祈りを寄せる村人たち、そしてその祈りが呼び起こす「救済」。あれは間違いなく『劔』の力とみていいだろう。
だが、肝心の『劔』の所在はどこだ?
村人の誰かが『劔』を持っているのは間違いないが――。
それがわからなければ、中心を折るどころの話ではない。
そうのんびりはしていられない。
傍に立てかけた白鞘へと目をやる。
まだ何の反応もないが、安心できるわけではない。さすがにこれほど村から離れていれば、『劔』の侵蝕の気配を感じ取ることは難しいだろう。こちらが感知できぬうちに侵蝕が進んでいるかもしれない。
「少しばかり、無茶もしないとな」
サヤはそうつぶやいて、白鞘を手に取ると診療所を後にした。
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