第110話 ポメルの治療

「こんなものが何になるとも思わねえが、こいつはあたしの覚悟だ」

 顔を上げ、改めてクロハナを見返す。


 クロハナは、ついて来いというように鼻先で行く末を指し示した。

「お姉さん、もったいない。そんなにきれいに伸ばした髪なのに」

「こんなんでこいつが助かるなら、安いもんだ」

 ポメルを抱きかかえるとクロハナの後を追いかけるように歩き始めた。



「これでしばらく状態を見る」

 クロハナは、寝かせたポメルへといくつかの薬を飲ませた後に、そういった。

 ポメルの両手と足は、念のために、と縛られた状態になっている。

「目を覚まさないが?」

「そんな簡単にはいかん。必要な薬は都度チャノメに持っていかせてやる。やれることはやってやるが、それでも体内の『蟲』が根絶やしにできる保証はないし、仮に『蟲』が体外へ排出されてもそのあとに体力が戻るほどの魔力が残っているか。そればっかりはわしにもわからん」

「これだけやってくれたことに感謝する」

 クロハナはわずかに鼻を鳴らした。


「人間の女、名前は?」

「サヤ、だ」

「サヤ、おまえみたいな人間ばかりだと俺たちも暮らしやすいんだがな」

 それだけ言い残すとクロハナは部屋から出ていった。

 部屋にはサヤとチャノメだけが残った。

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