第107話 ハーフの集落へ

「それであたしらをどこへ連れて行く気だ?」

「大丈夫、もうついたよ」

 彼の言葉で目の前が開ける。

 あの村とは異なる様相をした集落。森に囲まれた中にわずかばかりの建物、そして物珍しそうにこちらを見つめる獣人――ハーフたちの姿だった。

 決して好意的な目ではない。


「ねえ、クロハナのおじさんはどこ?」

「クロハナさんならいつものところだけど――」

 話しかけられた女性は、後ろにいるサヤの姿を見て露骨に嫌そうな顔を見せた。

 昼間チャノメに聞いた、人間とハーフの諍いの話を思いだす。

 両者の間にある溝は相当に根深いものになっているのだろう。


「おまえ、人間なんか連れてったってクロハナさんは診てくれないよ」

「わかってるよ。診てもらうのはそっちの子」

 サヤに担がれているのが、獣人の少女であるとわかると、今度は先程とは違う奇異の目でサヤを見返した。


「まあ、どちらにしろ、クロハナさんの気持ち次第だからね、行くならそこの脇道をぬけてくといいよ」

「ありがとう」


 こっちだよ、とチャノメが先陣をきって、元来た道とは別の茂みを進んでいく。

 サヤはまたか、と顔をしかめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る