第87話 宿にて今後の方針を考えるサヤとポメル

 村の中の宿の一室を借りうけて、そこで過ごそうというサヤさんの提案に乗り、今後の動きについて相談し始めた。

 当面、わたしたちはここに留まりながら『劔』を捜索することになりそうだ。

 サヤさんはテーブルに置いた酒瓶から直で口をつけて、満足げに息をついていた。

 いったいどこから、そんなものを。

 いぶかしげに見るこちらの視線など、意に介している様子もない。

「詳しいことは明日村に出て探るしかないだろ」

「村の人たちは何か話してくれるでしょうか」

「どうだろうな、今日の様子だと連中は本当に『祈り』の力で穢れた亡者ネクロシスを消滅させていると思い込んでいるんだろう。どういう経緯であれ、そんな力をあたしらが取り上げようってんだ。それを知ったら協力してもらえるとも思えない。何より、どいつが力を持っているかすらもわからねえんだ。迂闊なことをしてあたしらの真意が知れたらあたしらの身も危ない。まあ、結局のところいつも通りうまくやってくしかねえよ」

「まあ、そうですよね」

 力なく肩を落とした。

 毎度のことながら地道なことの積み重ねでしかない。

 それこそ、全知全能の『劔』のような力があれば、苦労もなく目的を達することもできただろうに。

 そんな本末転倒で『鎺』にあるまじきことを考える自分に人知れずため息が漏れた。

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