第84話 村人は穢れた亡者のために祈りを捧げる

「かつて聖霊様がそうしたように、彼らが救済されるよう私たちで祈りを捧げるのです。さあ、みなさん」

 その言葉を合図としたかのようにアイリスがその場に跪くようにして、手を胸の前で組んだ。それにならって村人たちは次々と同じ姿勢を取り始める。

 中にはつぶやくように聖霊の教えを唱えるものもいた。

「おい、何考えてる――」

 そうしている間にも目の前の化け物たちは自分たちのすぐ目の前へと迫ってきている。拙い足取りではあるものの着実に迫りくる脅威があるというのに、村人たちは一心に祈りを捧げていた。

 そうして間もなく、サヤが何かを言うよりも先に、まばゆいほどの閃光が穢れた亡者ネクロシスたちを包み込んでいく。

 神々しさを纏った光が柱となって彼らの体を飲み込んでいく。その光の中で、黒い影だけが不気味に浮かび上がっていた。

 光が一際強い輝きを放ったかと思うと、呻きとも悲鳴とも取れる声がその場一帯にこだまする。

 サヤは思わず耳を覆いたくなった。


 やがて――光が徐々にその輝きを失っていくと、周囲の穢れた亡者ネクロシスたちは残らず、その場で灰と化していた。

 周囲が再び夜の静寂へと戻る。

「皆様の祈りが聖霊様にも通じたのでしょう。亡者たちも、聖霊様による救済の手が差し伸べられ、安らかな眠りへとつきました」

 神父がそう述べると、村人たちは厳かな様子でその言葉にうなずいた。

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