第75話 聖霊様の神話
祈りをささげるために設けられたであろう聖堂には、礼拝者らしき人たちの姿があった。村の中では一際賑わっている様子が見られる。教会を中心としてこのあたりの生活が成り立っているのだろう。
周囲の建物の中でも、聖堂は目を引くほどに豪華な装飾がいたるところに施されている。
部屋の中央には石の彫像が置かれ、その周りに跪くようにして人々が祈りをささげている。美しく彫り上げられた女性の姿は慈愛に満ちた表情で礼拝者たちを見下ろしている。
「聖霊様のことはご存じで?」
サヤを案内するように神父は尋ねた。
「いいや、あいにく信仰には疎くてね」
「そうですか、ではこんなお話をして差し上げましょう」
昔、まだ世界が暗く、冷たい世界だったころ。
世界には争いが絶えることはなく、生者と亡者が入り乱れ、人々は世界に絶望していた。
人々はただこの世界の救済を求め、祈りをささげ続けた。
そこにあらわれたのが聖霊様なのです。
聖霊様は人々の祈りに応じて、生者に恵みを与え、亡者に救いを施した。
そうして世界は温かく、輝かしいものとなった。
世界の平穏を見届けた聖霊様は、この世界の一つになり、今でも私たちを見守ってくださっている。
「だから、私たちはこうして世界の一部となった聖霊様に祈りをささげることで恵みと救いを受けることができるのですよ」と神父は締めくくった。
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