第74話 『ハーフ』
「そのうち起きて、わんわん騒ぎだすと思うのでそんなに気を使ってもらっちゃかえって申し訳ないさ。もう少しだけ、ここで休ませてもらっていいかい、神父様」
彼は少し考えるような素振りをしたのち、うなずいた。
「わかりました。どうそ、お休みください。ただ、失礼ですがそのお連れの方は『ハーフ』では?」
「ハーフ?」
「獣と人の間に生まれた種族のことですよ」
言葉の端に少し嫌悪感があるようにも感じた。
それだけでポメルのようなものたちがどのような扱いであるか、サヤにはある程度察しがついた。
「用が済んだらこの村はすぐに出ていくよ」
取り繕うように返事を返す。
「そうですか、わかりました。聖霊様の教えには、いかなる人にも救いの手をさしのべよ、というものがあります。どうでしょう、もしよろしければ、お連れの方がお目覚めになるまで聖霊様にお祈りをささげてみてはいかがでしょうか? これから聖堂で祈りの時間がございます」
「ああ、いや。そうは言ってもこいつを放っておいてここを離れるわけにも――」
「それでしたら私がこの方の様子を見ておきますわ」
屈託のない笑顔で申し出たのはアイリスだった。
サヤは本音としては「あいにく無神論者だ」と突っぱねたいのは山々だったがどうにも断れる状況にもなかった。
それに、腰の白鞘がかすかに色を帯びることも気にかかる。
わずかに残る『劔』の気配――それは『鞘』に向けられた世界の無言の救援の声でもある。
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