第73話 ポメルを休ませる

 教会の敷地の横にひっそりとたたずむその建物は、随分と古びてはいたが、その造りはしっかりとしたものだった。彼女は不慣れな様子で扉を開錠すると、ポメルを奥のベッドへ寝かせるように促した。

 ベッドは少し埃っぽさもあったが、人を寝かせるには十分すぎるくらいのものではあった。

サヤがポメルをその上に横たえる。

年季の入っているだろうベッドがポメルの重みに、きいとわずかに鳴いた。

 おもむろに部屋を見渡した。

 ベッドの他には簡素な椅子と机、それからからっぽの本棚が壁一面に広がっている。そのどれにもベッド同様にうっすらとほこりがかぶっており、この部屋が長らく使われていないであろうことを物語っている。

「アイリス、どうかしましたか?」

 外から呼びかける声に彼女が顔を上げる。

 アイリス――それが彼女の名前なのだろう。

「ここは使ってはならない、と」

 厳しい表情を浮かべる男性が扉から顔をのぞかせていた。

「あ、あの、神父様。旅の方が突然気分を悪くされたようでして」

「だからといって、こんなところに――」

 ベッドに横になるポメルの様子と、傍に立つサヤの姿を認めると、少し困ったような表情のまま、彼は頭を下げた。

「私はこの教会の神父をしております、ブラッドリーと申します」

 丁寧な言葉遣いに、サヤは少し居心地悪そうに礼を返す。

 酒を頭からひっかぶって目をまわした挙句にこんな有様だなんて申し開きのしようもない。

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