第71話 ポメルはさっさと『劔』探しに向かいたい。
「毎回毎回、そうやってわたしを酔いつぶすんですから!」
「あたしはそういうつもりじゃないって、この素晴らしい飲み物のうまさをポメ子にもわかってもらおうと――」
「嘘ですね。わたしが気を失ってるうちに好き放題飲みたいだけでしょ。それに――」
そこまで勢いよく言ってからポメルがもじもじと言いよどんで、少しだけ声が小さくなった。
「いつも、わたしの意識がないのをいいことに――」
頬が紅潮したまま、最後までは言わない。サヤはいたずらっぽくにまりと笑う。
「そいつぁ、おまえが嫌がってないからじゃないか」
「違いますっ!」
ポメルがふんっと顔をそむけた。
「そんな話はもういいですから! さっさと調査を始めますよ!」
サヤの手からグラスをひったくる。
「ああっ!! まだ一口しか飲んでねえってのに」
まるで早く来いと言わんばかりに、くるりと踵を返して一歩を踏み出した。
「あ、おい、あぶな――」
サヤが声をかけるより先に、ポメルのその小さな体が後ろに転んだ。
宙を舞う盃と紫色の液体。
盛大に頭からブドウ酒を浴びたポメル。
勢いよく歩き出したせいで、彼女は背後から近づいてくる若い女性に気付かず、見事にぶつかったのだった。
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