第55話 オニとの会戦、蓮司の苦戦

 前線におけるオニの猛攻は先日のオニの襲撃とはくらべものにならないほど苛烈をきわめている。ヘリオス率いる近衛隊の兵士たちは苦戦を強いられつつも、その強い意志のもとに集った力はオニたちの暴威になんとか渡り合っている。

 

 だが、一方で大方の味方の予想を裏切る出来事がおきたのは、火渡蓮司の方であった。


「くそっ! なんで死なねえ!」


 蓮司の怒号にも似た声が響く。

 多勢に対して、後手にまわってしまったせいか。

 次々と襲いかかってくるオニたちを相手に、その炎の大剣で応戦し切れていない様子であった。


 本来ならば、ヘリオスとともに突破口を作り出す役割のはずだったが、先の蓮司の苦戦により、先陣の二人と後続の討伐軍はオニたちの群れによって大きく分断されてしまっていた。


「あいつ、威勢がいいのは最初だけじゃねえか」

 兵士がこの状況を作るに至った蓮司への皮肉を叫ぶ。


「おまえたち、彼の救援に向かうぞ」

 ヘリオスが声を上げた。


「しかし――」

 兵士たちの困惑の声。

 こんな無謀な作戦を立てた張本人の尻拭いをせねばならないことは本意ではないのは当然だろう。

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