第54話 オニとの遭遇、蓮司の作戦
「あとのことは任せます」
そう言い残して、隊の最前線へと進み出た。何かを決意しているようにも見える。
彼の隣には火渡蓮司が並ぶ。
大剣を肩に担ぎ、ヘリオスの姿に一瞥をくれた。
二人はどちらともなく、オニの群れへと駆け出した。
それは、出立前に蓮司から提案された作戦案に基づくものであった。
その話がなされたのは、オニ討伐隊が出立するすぐ前のことだった。
「つまりはこういうわけだ」
蓮司は討伐作戦をこう説明した。
「俺とヘリオスさんでまずは先陣を切って突っ込んでいく。そして、やつらをなぎ倒していく。で、道を切り開いたら残りの軍でやり残したやつらをぶっ倒してくってわけだ」
作戦と呼ぶのもおこがましいほど稚拙な戦い方だった。
こんな戦い方をしても普通なら負け戦にしかならない。
ただ、普通じゃない男がここにいる。その限りでは、この戦術も意味をなすのだろう。
ヘリオスの考えていることが伝わったのだろうか。
「もちろん、俺ひとりでも構わない。けど、元隊長の立場ってのもあるだろ? 新旧の隊長の突撃態勢、ってのも壮観じゃないか」
「戦いは見栄や見栄えでやるものではありませんが、今の指揮権はあなただ、私はそれに従うだけですよ」
「ヘリオスさんは固いなあ、まあそういうわけだ。よろしく頼むぜ」
「お待ちください!」
声を上げたのは、一人の兵士だった。
「あまりにも無謀すぎます。私たちもヘリオス様に追随し、微力ながら加勢させてください」
ヘリオス派というべきか、いまだ蓮司隊長下に身をおくことをよしとしない兵士たちからの声だった。
蓮司は唐突な横槍に少し不機嫌そうに眉を潜めたが、何かを考えるそぶりをしたあとに、「悪くないかもな」とうなずき、その申し入れを承諾した。
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