第49話 サヤの過去をほんの少し垣間見る

「悪かったって。ちょっと悪ふざけすぎたよ」

「ううう」と困ったような、怒ったような表情で部屋の隅っこでサヤを睨んでいる。

 噛みついたあと、そのまま飛び上がって今の位置に逃げてしまったのだ。


「もうしませんか?」

「しない、しない。いいから、とりあえずこっちもどってこいって」

 サヤは笑って、自分の隣を指し示すようにぽんぽんとベッドを叩いた。


 ポメルはおずおずと元の位置に戻ると、サヤが二つに裂いた絵を見下ろす。

「お師匠様とはどういうお知り合いなんですか?」

「恋人さ、昔の」


「ええええええ!? だって、え、あれ?」

 ポメルはすぐさま自分の師匠の年齢を思い浮かべようとしてみたが、年齢不詳すぎて類推するのは難しかった。かわりにサヤの年齢を考えてみようとしたが、それもうまくいかなかった。

「もっとも向こうはそう思ってなかったろうけどな」

 

 目をぱちぱちとさせたまま頭から煙を吹くポメルにはそんなことは聞こえている様子にない。


「んなことはどうでもいいんだよ。それより、あの『劔』の中心なかごについて、ポメ子はどう見る? 昨日の戦いの様子からなんか気付いたか」


「え、ああ、はい。そうですね――」

 話し込む二人の見解はおおむねの一致を見せた。

 

 

 しばらくそうしていると、部屋の扉が乾いたノックの音を響かせた。

「サヤ様、ポメル様、広間にお集まりください」

 扉越しに使いのものから声をかけられる。

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