第45話 火渡蓮司への賛辞
「この火渡蓮司様を恐れるがいい、オニどもよ!」
次々とオニの死体を積み上げていく蓮司が高らかに叫んだ。
腕に覚えのあるであろう傭兵たちも、長き鍛錬をこなしてきた兵士たちも、彼の傍らではその存在はほぼ無意味と化す。
それは、達人と呼ばれるであろうヘリオスですら変わりはなかった。
それほどまでに彼の持つ力――『劔』は圧倒的であった。
蓮司の活躍により、次第に戦場からはオニの声が掻き消えていった。
鎮火され、獣の焼け焦げた臭気だけが残る戦場はすっかりと闇に包まれていた。
ただ、一点。蓮司の右腕の燃え盛る大剣を除いては――。
勝利を告げる静寂の後、戦士たちから歓喜の声が上がる。
負傷し、殺された仲間たちもいたが、蓮司の力がなければここで勝利を味わうことなどできなかったかもしれない。
「――太陽の英雄だ」
どこかで誰かが言った。それはこの国に古くから伝わる神話の存在。炎まとい、邪悪なるものを退ける英雄のことだ。
蓮司の周りだけ、その大剣の炎が彼の姿を照らしだし浮かび上がっている。
神々しくもあり、勇猛でもあるその姿を、神と見まごうものがいても不思議ではない。
「ああ、まさにそうだ」
「火渡蓮司は英雄の生まれ変わりだ!」
「オニどもは皆殺しだ!」
口々に彼を称賛する声が湧き上がる。
喝采の中、サヤは煤と返り血に塗れた姿でその光景を見つめていた。
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