第44話 火渡蓮司のチート戦闘力

 サヤはオニの進軍を周囲の兵士や傭兵たちとともに応戦し、なんとかその進行をとどめるに至っている。彼女がポメルを蓮司のもとへと向かわせたのは、自分ひとりで守りきれる確信がなかったからである。

 サヤもここにいる彼らと同様、せいぜい「腕の立つ人間」の一人でしかない。


 あそこにいる「アレ」とは根本的に異なるのだ。


 混乱極める戦場の中で、苦戦を強いられているのは傭兵たちも同様だった。

 ただ、一人を除いては。


「くそう! こいつら普通のオニじゃねえぞ」

 そう叫んでいたのは、蓮司に喧嘩を売ったあの大鎧の男だ。


「だったら、下がってるんだな」

 蓮司は、そのわきから大剣を掲げて走り抜ける。


「業火紅蓮剣!!」


 炎をまとった大剣は男を囲むオニをまとめて焼き払い、一瞬のうちに灰塵へと帰してしまった。

 猛者たちが苦戦するオニたちをいとも簡単に屠っていく。

「ったく、歯ごたえがねえな」


 呆れるように蓮司はためいきをついた。


「炎獄陣!!!」

 巻き上がる炎は彼の意志によってオニども喰らい尽くしていく。

 なんとでもないと言った表情で、しかし着実にオニたちの死体を積み上げていった。


 ――これが『劔』の力。

 ポメルはその光景を呆然と眺めていた。


 サヤが「安全だ」と言った理由に改めて納得がいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る