第42話 近衛兵たちとオニの戦い

「なんだってこんなにこいつらしぶといんだ」

「刺しても刺しても倒れねえよ」

 オニと対峙したまま、近衛兵たちは槍を構えている。兵士たちの口からは弱気めいた声が口々に漏れている。彼らにしてみれば、オニの討伐は慣れている――はずであった。

 

 だが、今回は何かが違う。

 凶悪なその存在にうろたえ始めている。

 その動揺を突くようにオニたちは暴虐を始める。


「---っ!!」

 振り上げたオニの腕につかまった若い兵士が、声にならない悲鳴を上げる。

「おい! 大丈夫か」

 味方を助けるように槍を突き立てるが、固い表皮に弾かれ、逆に後ろへと弾き飛ばされてしまった。


「た、たすけてくれ!」


 へたり込む男の傍らからもう一人の影が地を這うようにオニのもとへと一直線に駆け抜けていった。


「おおおおおおおッ!」 

 炎の中を切り裂くように現れたヘリオスは、巨体なオニの片腕を一刀のもとに切り落とした。

 獣めいた悲鳴を上げながら膝をつくオニの胴へと剣を突き立てると、鈍い色をした鮮血が返り血となって噴き出す。


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