第34話 ポメルはこう見えて出るところは出ている

「せっかくだが、あたしは、あんたのようなのとは相性が悪そうだから遠慮しておくよ。代わりと言っちゃなんだが、こいつは貸してやるぜ」

 ふいにポメルの体が床からすこし浮き上がった。サヤがポメルの首根っこを掴んで蓮司の前に差し出したのだ。


「ちょ、サヤさん何を勝手に――」

「まだ『劔』の情報が欲しい、探るのは本来おまえの仕事だろ」

 目の前の蓮司には聞こえないように耳打ちする。

「だからって……」


「よし、蓮司。こいつのことはまかせた。戦闘は得意じゃないが、情報伝達とか便利なことができるから自由にこき使ってやってくれ。それに見かけによらず――」


 サヤがにやりと笑うと、ポメルの外套の隙間から手を差し入れると、その胸を後ろからわしづかみにした。

「ここは意外と大きいから、可愛がってやるといい」

「あん、ちょっ、――何するんですか」


 蓮司の視線はその光景をまざまざと見つめて鼻の下を伸ばしていた。

「そ、そういうことなら仕方ない。ポメルちゃんは俺が責任をもってあずかろう」


「じゃあ、またな」

 上機嫌に後ろ手に手を振る。もう片方の手には小袋からじゃらじゃらと音を立てている。

 ポメルは、はっとしてふところに仕舞い込んだはずの支度金を探してみるが、その時には既に遅かった。

(サヤさん!)

 心の声で呼びかけてみるが、当の本人が戻ってくる気配もなかった。

 

 はあ、とため息をつく。

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