第7話 うまく逃げ・・れるわけもない。
入れ違うように大きな布袋をもった男がバランスを崩して派手に転んだ。
「馬鹿、何やってんだ」
後ろから大きな声が聞こえてくる。
「こうなったら力ずくで抑え込むぞ、囲め!」
わらわらと数人の男がわたしの周囲に集まってくる。思っていたよりも人数が多い。
やっぱり逃げればよかった。
つかみかかってくる男の脇をするりとぬけて、路地を駆け出した。
身軽さでは負ける気はない。
そのまま、一気に距離を空けようと駆け出したところに何かが私の足を捕えた。
黒い塊が私の足を絡め取るように巻きつき、勢いのついた体は大きく宙を舞った。
なんなのよ、これ!
「特性の魔術トラップだぜ、ここいらは俺らの縄張りでな。いたるところに仕掛けてんだよ。悪いな、犬っころ」
なんとか足を自由にしようともがいても一向に自由になる気配はない。
その間にも、男たちがゆっくりと近づいてくる。
ああ、わたしはどうなっちゃうんだろう。
この世界の獣人たちってどんな扱いなんだろうか。男たちのどよめきから考えると珍しい部類なんだろうか。そうすると、どこかに売り飛ばされるのかな。それとも、毛皮をはがれるのだろうか。
だったらせめて意識を失ってからにしてほしいかな。生きたまま皮をはがれるなんてとても耐えられるとは思えない。
危機にもかかわらず意外と冷静な自分に嘲笑が漏れた。
パパ、ママ――。
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