第4話 ポメルは「鎺(はばき)」として仕事をきちんとやりたい

「っく……」

 なんだかくすぐったい。

 もぞもぞと変な感じがする。

 夢見心地のまま、ぼんやりとしていた視界が次第にはっきりとしてくる。


「って、何してるんですかーー」


 あろうことか、一人の女性が私の外套をまくってその尻尾をまさぐっていた。

「これ、ほんとうにつながってんだな。前から確かめてみたかったんだよ」

「や、やめてください!」

 ベッドの上から飛び上がった。


「ん? ここは?」

 そこでようやく自分の置かれている状況を冷静に見渡した。


 そうだ! と思い出したかのように目の前の女性をまじまじと見つめた。

「お嬢ちゃん、いきなりぶっ倒れんだからさすがに焦ったよ」

「お嬢ちゃんじゃありません! だいたい、あなたがあんなものをわたしの口に突っ込むからこんなことになったんじゃないですか。お酒は十五を越えてからと父に厳しく言われていたのに」

 あわあわと変わる表情に合わせて揺れる尻尾をサヤが面白半分に眺めていたなどと、話している当の本人は気付くはずもない。


「で、父上の戒めをやぶるために不良少女はこんなところに来たのか?」

「違います!」

ポメルはムキになったように大きな声で否定した。そして、そのあと、わざとらしく、こほんと咳払いをした。


「わたしはポメル・タンブルウィード。『鎺(はばき)』よりあなたのパートナーに任命されました、サヤ・ヴァーミリオン」

 首から下げたその証をサヤへと見えるように手に掲げた。


「その歳で『鎺』たあ、ずいぶんとお勉強熱心なことで」

 皮肉を込めたであろうサヤの口ぶりも、当の本人は言葉通りの褒め言葉で受け取ったようだ。その瞳はどこか自信で満ちており、自分に課せられた使命への誇らしさをも感じさせている。


「そうとわかったら、すぐに行きましょう!!」

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