5 自炊って、ええな……【浩太】
普段、どちらかと言うと、コンビニや外食の方が多い印象だった莉緒が、先日のオンラインデートの時、手料理を披露してくれた。冷蔵庫から成形されたタネを取り出し、動画配信者のように、焼く工程とソース作りを実況してくれる。
やがて、満足そうな莉緒の前に置かれた、出来立てのハンバーグ。焼き色は完璧。ライスにサラダも付いて、栄養もありそう。
「ほら、見て。中から、肉汁がね! に、肉汁が……それなりに出て美味しそうでしょっ?」
一生懸命な姿が、終始、微笑ましかった。
「うん、美味そう! でもさ、なんか一人分にしては量多くない?」
僕の疑問に、一瞬、喉を詰まらせかけた莉緒。急いで水を飲んだ後、
「……ま、間違って二人分のレシピで作っちゃったの! 大体どのレシピも、二人分が基本でしょ? だから……。ち、ちゃんと全部食べるから大丈夫だよ!」
って、顔を赤くしながら焦ってた。
という、初オンラインデートの様子を、野郎ばっかの、こちらは初オンライン飲み会上で白状させられた。
自粛前、時々、集まっては飲んでた、大学時代の友人たち。今夜は独身勢ばかり、僕も含めて四人が参加した。
ちなみに、あのアーティストの件は、どんなに酔いが回っても絶対にゲロしない。
酒だけに。
……飲み会開始から一時間半か。家にいる安心感で、いつもよりお酒が進んでる気がする。
「それさぁ、わざと二人分作ったんじゃねーの?」
友人の一人が言った。同調し、はやし立てる他二名。みんなペースが早い。
僕も頭がふわふわする。
「わざと? 何の為に? ま、まさかあの時、他に食べさせたい相手が部屋にいたとかっ? あの、イケメンアーティスト⁉︎」
「アホ。未来の旦那様に食べてもらいたくて、今から練習してるに決まってんだろ。察してやれよ。……くっそ、誰だよこんな話振ったやつー‼︎ って、俺かぁぁぁ!」
「へっ⁉︎」
ウォッカをロックで飲んだくらい、急激に顔が熱くなった。手の中の缶は、アルコール度数九パーセントだったはずだ。思わず握り潰してしまったけど。
いや、まさかそれって、それって、あり得へん……こともないんか?
「まあ、それが本当にお前とは限らないけどな。やっぱり、会えない恋人より、近くのイケメンアーティストって言うしなー。つって、誰か知んねーけど」
「そーそー、フラれたらすぐ言えよぉ。その時は、全員集めてオンラインやけ酒会開いてやるから。今から声掛けとこ」
「いやでもさ、最近、マジでストレスから過食になる人多いらしいから、莉緒ちゃんも……」
雑音は即ミュートにした。
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