第5話

 『02』番が退場になってから、初めての朝が来た。『04』番は『05』番が部屋から出てこないので、心配しているようだ。何時もの椅子に座って、『05』番の部屋をチラチラ見ている。


 『04』番は基本冷静に物事を見ているのでこう言う感情的な部分は珍しい。私がテーブルに置いてあったコーヒーを飲みながら、そんなことを考えていると、今日も『00』番が起動した。


「おはよう、諸君。早速だが本題に入ろう。『04』番に問題だ。此処には今、何人居る?」

 この問いに対し、『04』番はこう答えた。

「今は……貴方を除いて、私を含めると八人居ます。」 

 『04』番がそう言うと、『00』番は画面を何時もの【Hello】から【Correct answer】に変えた。


「正解だ。さて、全員揃ったところで言いたいことがある。」

「待って下さい。」

 『04』番が話を止める。

「どうした? 『04』番。」

「まだ全員揃っていません。『05』番が居ます。彼女が来てから話を進めてくれませんか?」


 『00』番は『04』番の意見を聴いた後、答えた。

「あぁ、今そのことについて話そうと思っていたんだ。」

 その時、私は嫌な予感がした。『00』番の画面の文字が【Hello】に戻る。

「『05』番は退場した。自らな。」


 その場にいる全員が驚いた。昨日よりも、ずっと。何より自らと言うところにだ。


「……嘘だろ? なぁ『00』番……嘘だよな?」

 『04』番が『00』番を問いただす。彼女は素に戻っているのか、敬語が抜けている。

「私はゲームに参加していないので、嘘は吐かない。全て本当の事だ。彼女は昨晩、私のところに来て言ったのだ。」


   ——私を退場させて下さい——


「私はその願いを叶えただけだ。」

「そう……ですか……」

 『04』番は力を無くしたようにそう言うと俯いたまま動かなくなった。私は今の話を聴いて疑問が頭に浮かんだ。


「『00』番、一つ訊いていいか?」

「別に構わないが。」

「このゲームは……リタイヤができるのか?」

「……一定の条件を満たしていれば、だが。出来なくは無い。」

 その言葉に『04』番が反応した。


「じゃあ、私は?」

「『04』番。前から思っていたんだが、何故そこまで『05』番に執着するんだ?」

 私が訊くと『04』番は、

「だって、だって彼女が……初めて出来た、友達だったから……」


 彼女の話によると、今まで彼女は友達と言えるものがいなかったらしい。一番を求めるあまり、いつの間にか孤独になっていたようだ。

 それは社会人になっても続いていた。そんな時にこのゲームで彼女に出会い、初めて話しかけられたらしい。


「だから彼女をこのゲームで守り抜くと誓った。自分が犠牲になってもいいと初めて思えた。なのに、彼女は……!」

「もういいよ、『04』番。」

 『07』番が言った。


「私も、機械しか友達がいなかったよ。でも、それで良いじゃん。前に戻るだけだよ。」

「それでも、それでも私は! 退場するよ……」


 『04』番は泣きながら『00』番に

「退場させて下さい。」

 と言った。しかし、『00』番は

「いや、それは出来ない。」


「……ん?」

 『04』番の涙はピタリと止まった。



 

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