第3話

 番号順で一人、一分から三分までの間で自己紹介をする。もちろん、全員席に着いて。


「それじゃあ、『01』番さん。どうぞ。」

 『04』番が、私を指名した。私のやり方次第で、この後の流れが決まる。あくまでも自然に、最低限の内容だけを伝えなければ。


「……はじめまして。『01』番だ。先程、女と間違えられたが私は歴とした男だ。一週間、宜しく頼む。」

 短く、最低限のことしか言わないことに成功し、私が安心していると、

「へぇ、お姉さんって男だったんだ。折角、口説こうと思っていたのに。」


 私の自己紹介に『03』番が口を挟んだ。

「残念だったな。私が男で。」

 そう言ってやれば、『03』番は一瞬不機嫌そうな顔をした。

 しかし、直ぐに笑顔に戻った。きっと彼は普段から愛想笑いをしているのだろう。


「では、『02』番さん。どうぞ。」

 今回のケースは完全に『04』番の勝利だ。主導権を、誰よりも先に握った。彼女の行動力は正直尊敬する。仲間にしたら、頼りになるタイプだ。しかし今回の場合、彼女は敵に位置する。厄介な存在だ。


「『02』番です。名指しとかされると緊張しちゃうので嫌です……見ての通り女です。宜しくお願いします。」

 こんな調子で、『04』番を中心に自己紹介が進められていった。


「『03』番だよー。可愛い女の子が大好き! チャラ男ってよく言われるよ。此処から出たら、連絡先こーかんしようね! 宜しく!」


「『04』番です。常に一番を目指しています。性別は女です。たまに、男と間違えられます。宜しくお願いします。」


「『05』番です。……女子高生一年目です。オドオドしてしまいがちですが、宜しくです。」


「『06』番。趣味は筋トレ、男らしい体を目指している。これから宜しくな。」


「『07』番です! 機械を弄るのが好きで、最近女子力を捨てました! 宜しくお願いします!」


「『08』番です。ニヤニヤしていて気持ち悪いとよく言われます。アニメとフィギュアが好きです。宜しくお願いします。」


「『09』番です。お洒落が好きで、ファッション系の会社で働いています。宜しくお願いします。」


「『10』番。会社の経営をやっている。よく私のことを偉そうと言う奴がいるが実際私は偉いのだ! 威張って何が悪い!」


 ……最後の奴は荒れたが、無事自己紹介を終えた私達は、これからの一週間をどうやってやり過ごすかを話し合った。しかし、良い案は出ずに、月と星の時間がきてしまった。


「なるようになるんじゃないんですか?」

 『02』番がそう言った。私以外はもう面倒になったのかその意見に賛成し、自室にさっさと帰って行ってしまった。


 計画無しに物事が上手くいくだなんて、奇跡でも起こらない限り有り得ないのに。その時の私達は、それを信じて疑わなかった。


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