第7話 未来を視る異能

《ヴィオラ視点》


 わたしの異能で仮面の人が近づいてきていると感じたとき、わたしたちは岩影に潜んだ。


 仮面の人は歩きながらも周囲を見ている。

 このままだと岩影にいても見つかってしまいそう。


(グレア、このままだと見つかっちゃいそう!)


(そうみたいだね……『未来視』)


 グレアが未来視を使った。


 するとグレアの目の色が黒からに変わった。


(綺麗な赤色……)


 わたしは少し見惚れてしまった。

 そうして数秒集中していたのか、額に汗が滲んでいる。

 目の色が黒に戻ったグレアは、わたしたちが隠れている岩の向こうに石を投げた。

 コツンと小さい、だけども仮面の人には聞こえるくらいの音が響いた。


(!?そんなに近くに投げたら見つかっちゃうよ!)

 

(大丈夫。こっちにきて、ヴィオラ)


 グレアに手をとられたわたしは、岩陰に押し込まれるようにグレアに押さえつけられた。


 こんなの見つかっちゃうって!!


 グレアの口が目の前にある。あ、八重歯だ。


(く、苦しい)


(静かに!我慢して)


「誰だ!」


 仮面の人がこちらを覗く。


 だけど、左側の隅にいたおかげで、仮面の死角になり見えなかったみたいだ。


 目の前を仮面の人が通り過ぎていった。

 わたしたちに気づいた様子はないみたいだ。


「……ふう、なんとか見つからずに済んだね」


 グレアは額の汗を拭っている。


 わたしは異能を使い、周囲に人がいないか確認した。

 ……あの仮面の人以外に反応はないね。

 

 それに仮面の人も、奥へと消えていった。


 とりあえずは一安心かな!


 わたしはグレアを抱きしめた!


「グレア!先に言ってよ!!」


ムッと頬を膨らます。


「ぅえ!?ご、ごめんって」


 すごく怖かった。見つかるかと思ったよ!


「それにしても、グレアすごいね!どうやったの?」


「んーとね……どうすればあいつの気を引けるかっていうことと、どこに隠れれば見つからないかを想像したんだ。10通りの未来を視てそのうちの1つを行動した。……ぼくもこんな使い方したことなかったけど、すごく便利だね。あとすごく疲れる」

 

 疲れるのか。多用はできないみたいだ。


「ありがとう。おかげで見つからずに済んだよ」


「ふふ、ヴィオラのおかげでもあるんだよ?ヴィオラが感知してくれたから、ぼくは未来視に集中できたからね。……この調子で出口まで行けると良いんだけど」


 わたしとグレアは笑い合う。

 

 わたしももう少し頑張って感知しなくちゃ!



◇◇◇



 わたしとグレアは広場までたどり着いた。


 と言っても、通路には人はいなかったのですぐに行けたんだけど。

 広場にはわたしと同じ歳くらいの子供たちが鎖につながれている。

 

「……ヴィオラ」


 グレアが緊張したような目でわたしを見つめる。


「……うん、わかってる。わたしたちで助けるんだ」


 わたしはグレアに頷き、手をとって歩き出す。

 

 ここまでわたしは、ずっと異能を使っている。


 さっきの仮面の人もそうだが、仮面の人たちの『心』の色は飲み込まれるような暗い紫だ。


 それにくらべ、ここの子供たちの『心』の色は、深い闇、真っ黒だ。


 助けもなく、殺されていく仲間を見て、絶望しているんだろう。

 この子たちを助けるために、わたしとグレアは王国の騎士団に助けを呼びにいく。失敗はできない。

 みんなの視線を感じる。お前たちは逃げるのか、おれたちを置いていくのか、そんなふうに感じる。


「もう少し待っていて。今、銀翼の騎士団に助けを呼びに行くから」


 グレアがそう呟く。

 みんなに言うとかそういうことではなく、自分の中に刻み込むみたいに聞こえた。

 

(そうだね。わたしたちならきっとできるよ)


 グレアの手を強く握る。

 すると、グレアも握り返してくれる。


 わたしとグレアは広場を抜け、通路を進んだ。 

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