自分の目的

「す……む……、すす……」


あぁ、懐かしい声が聞こえる……


「お……に……ちゃん……」


誰だっけこの声……懐かしいような、いとおしいような……


「進! 進! 」


「お兄ちゃん! ねぇお兄ちゃん!! 」


「先生! 息子の容態はどうなんですか! 」


そうだ思い出した母さんと妹だ


「進さんは全身複雑骨折で脳にも深刻なダメージが残ります。

意識が回復するかも不明です。

おそらく今まで通りに生活するのは困難かと……」


えーと、これは夢か? 声しか聞こえないし、なんか体動かないし


「進……」


「お母さん帰ろ」


あれ? 母さんの名前も、妹の名前も思い出せない……

なんでだ?


「そうね……また来るわね進」


母さん……心配させてごめんなさい。すぐに帰るからね

妹もごめんな……


「進聞こえるか? 」


何処からか爺さんの声がする……

なんかこの感じ懐かしい。だけど真っ暗でなにも見えない


「爺さんか? おれ寝てるよな? 」


「うむ。お主はいま宿で寝ておる」


「ならなんで、意識があるんだ? 」


「お主の意識を一時的に現実世界あっちに移したんじゃ」


「なんでそんな事する必要があるんだ? 」


「お主のモチベーションアップの為じゃよ」


「モチベーションアップ? いまでも十分あるが? 」


「お主はまだ最初の町に何日おる? 」


「転生してもう、1週間は経ったかな? 」


「お主のレベルは知っておるか? 」


「レベル? そーいえば知らないな」


「お主が最初に転生した時のレベルは3じゃった」


「3Lv.であのステータスだったのか……」


「今のレベルは何じゃと思う? 」


「う~ん、色々と練習とかしてるから……6Lv.! 」


「残念ながらお主のレベルは四捨五入しても10Lv.ならないのぉー」


「えっ! まさか!? 4? 」


「正解じゃ。」


「嵐牙のレベルは!? 」


「あやつも4じゃ」


よし! 嵐牙には負けてない!


「お主にはまだ言ってないが転生者は後二人おる」


「二人!? 」


「そうじゃ。」


「嵐牙には言ったのか? 」


「うむ。さっき言ったぞ」


「さっきって事は、俺と同じ睡眠中にか? 」


「そうじゃ。ワシはお主達を転生させたじゃろ? 」


「させて貰ったな」


「だが、異世界こっちの世界に干渉出来ないとその時に言ったじゃろ? 」


「言ってたな」


「じゃが、お主らが寝ているならギリギリ意識だけならここに

持ってこれるんじゃ」


「へぇ~」


ん? ちょっと待てよ? ギリギリ意識だけなら?


「なぁ爺さん? 」


「なんじゃ? 」


「俺が死んだら蘇生させてやるって言ったよな? 」


「うむ言ったのぉ」


「その場合もう一回俺は転生するのか? 」


「うむそうじゃ」


「転生はここに意識を持ってくるより魔力を使わないのか? 」


「意識を持ってくるより、転生の方が魔力消費は多いぞ」


「なら転生させるって何回までいけるんだ? 」


「う~む……おそらく一回が限界じゃろうな」


1回!? 敵と命の取り合いをして、1回しか負けられないの!?


「なぁ、転生者が後二人居るって言ったよな? 」


「うむ」


「そいつらの能力はあるのか? 」


「うむ両方とも凄い能力じゃ」


「教えてくれ」


上級回復ハイヒール付与エンチャント合成魔法ミックスマジックじゃ」


「おぉ!! バーンさんとキースさんに教えてもらったやつだ! 」


ん? いま3つのスキルを言わなかったか?


「爺さん? 3つのスキルをいま言ったぞ」


「うむ3つのスキルを言ったのじゃ」


「転生者は二人だよな? 」


「うむ」


「なのにスキルが3つ? 」


「そうじゃ」


「って事は片方が2つスキルを持ってるって事か? 」


「そうじゃ。上級回復ハイヒール付与エンチャントを持っておる」


「すごっ! 両方とも100年に1度現れるか

分からないくらいレアなスキルなのに! 」


「2つとも凄く強力なスキルじゃ」


「そいつはいまどこに? 」


「パーシャの隣町、フラシユ町に居る」


「え~隣町~めんどくせぇ~」


「ふっふっふっ……」


「どうした爺さん? 突然笑いだして」


「それがなんと! その転生者二人はパーティーを組んでおる」


「へぇ~俺と嵐牙と同じか」


「その二人がいまこっちのパーシャの町に向かっておる! 」


「おぉ~!! ベストタイミング! 」


「一応聞いておくが、そいつらの性別は? 」


男は嫌だ! 男は嫌だ! 男は嫌だ! これ以上まわりに男は要らない!

せめて可愛く無くて良い! 普通の顔の女の子でも良い! 男だけは嫌だ!


普通の顔と胸さえあれば!! こい! こい! こい!!


「二人とも女の子じゃ」


「よっしゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!!!!!! 」


きたーーーーーーーー!!!!!


「いきなり大きな声を出すんじゃない! 心臓が止まったぞ!」


「ごめんな爺さん。あまりにも嬉しかったからな! 」


「嬉しそうでなによりじゃ」


「そいつらとパーティーを組めば魔王討伐が一歩近づく」


「そうじゃ! さぁ進そろそろ7時30分じゃ起きるんじゃ」


「ありがと爺さん! 」


「最後に良い忘れた事があった! 片方の女はお前の……」


最後に爺さんが何と言おうとしたのかはわからなかった


目を覚ますと見覚えがある宿の一室で寝ていた


あれは夢だったのか? だが、爺さんが言ったことはハッキリと

覚えている。転生者二人がこちらの村に向かっている


この事を嵐牙もおそらく知っている。パーシャに来ると行っても

俺達の居るところに来るとは限らない。


相手も俺達の事を知っているかも分からない


一旦嵐牙の部屋に行くか


「嵐牙~起きてるか~? 」


「静かに……」


「お前!! 」


嵐牙の部屋に入ると嵐牙はパンツ1枚でヨガをしていた


「お前なにやってんだ? 」


「見て分からないか。ヨガだ」


「いやわかる。THE・ヨガみたいなポーズをしてるからな」


「お前は爺さんからあの話を聞かなかったのか? 」


「聞いたぞ。女二人組の転生者だろ? 」


「その通りだ、女二人組の転生者、問題は女と言う所だ」


「そこがどうした? 」


「第一印象は大事って知ってるか? 」


「あぁ知ってるぞ」


「女の人にだらしない体を見せる訳にはいかない」


こいつ別に太ってないのに……


「なぁお前、転生者の奴等がどこに来るか知ってるか? 」


「あぁ爺さんから聞いたぞ」


「ナイス! どこだ? 」


「ギルドだ」


ならギルドで待ってればそれっぽい奴等が来たら

話しかければ良いんだな


「なら朝食を食べてギルドに行こう。なんならギルドで朝食を食べよう」


「わかった」


「それ終わったら行くぞ」


「わかった。少し待っていろ」


さてあれが終わるまで暇だな……二度寝するか!!

いやまて、今二度寝したらもう戻れない気がする……


「風呂でも入って来るか」


「ねぇあんた? 」


「何だ? バラキュバス」


「フィラーがおなか減ったって。後そのバラキュバスって

言わないで。私にはアンナって名前があるの」


「わかったよアンナ」


「あと、あの子の事もフィラーって言って」


「わかった嵐牙にも伝えておく」


「そうして」


「なぁ今から風呂入って来るけどお前たちも一緒に来るか? 」


「そーね昨日お風呂入って無いから入りたいわね」


「なら呼んで来いよ」


「わかったわ」


どうせ風呂入るなら嵐牙も誘うか

あっ、でもあいつヨガ中だったな……


サウナなら入るだろ


「嵐牙~」


「なんだ進」


「風呂入りに行くんだけど一緒にどうだ? 」


「今から女性に会うのに汗臭い体で会うわけにはいかない。

一緒に行かせてもらおう」


「なら早く来いよ、てかお前汗臭っ! 」


「これもヨガパワーだ」


「ねぇ? すごく臭いんだけど? 」


「アンナ早く行こう」


「場所知ってるのか? 」


「うちは知らないわよ」


「私も知らない」


「俺は知ってる」


「俺も知ってる」


場所を知ってるのは俺と嵐牙の二人か


「アンナとフィラー着替えは? 」


「私は無い」


「うちも無いわね」


「それじゃあ今までどうしてたんだ? 」


「服を洗濯してる間はねぇ」


「察して」


「なら金やるから服買ってこい」


「あんた意外と金あるのね」


「まぁな」


メロウさんのクエストで結構貰ったし

地味にクエストやってるし


「10000GALAで足りるだろ」


「ありがとね」


「嵐牙先に風呂入っててくれ」


「わかった」


「それじゃ行くぞ」


「お客さん今日はどうするんだい? 」


「同じ部屋で」


「あいよ」


「それでお風呂はどこなの? 」


「そこだ」


「近か! というかここ酒場じゃない? 」


「この中に風呂があるんだ」


「先に行ってるぞ」


「わかった」


「服屋はそこだ」


「そこだって、酒場の向かい側じゃない」


「まぁあそこだから、テキトーに服買ってこい」


「わかった」


フィラーとアンナは買い物に行ったな


さて! 風呂風呂


「お風呂貸してください」


「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか? 」


なんで? なんで名前? まぁ良いか


「倉本進です」


「料金は先程4人分いただいております」


嵐牙が払ってくれたのか? 紳士的ー


「じゃあ通っても良いですか? 」


「どうぞごゆっくり」


嵐牙はもうサウナにいってるのか? さすがにまだか


風呂場には嵐牙以外人の姿は見えない


「嵐牙お前どのくらい洗った? 」


「頭と顔だ。進、ボディソープ持ってるか? 」


「ほら忘れてただろ」


「サンキュ」


「嵐牙、シャンプー」


「ほら」


「サンキュー」


風呂場には蒸気が広がり、二人の会話が木霊する


「女の転生者楽しみだな」


「あぁ可愛かったら最高だな」


「能力だけで見るとめっちゃ強そうな能力だぞ二人とも」


「魔法アタッカーとヒーラー兼バッファーだもんな」


「100年に1度が4人いるパーティーとかRPGだったら

100Lv.のパーティー見たいなもんだからな」


「だけど現に俺達のレベルは4だけどな」


「あっちのレベルが高かったら情けないよな」


「そうだよな。よし! サウナ行ってくる」


「俺も後で行く」


嵐牙が居なくなると何の音もしないと言う訳では無い

だが、さっきまで風呂場に木霊していた声が消え、

隣の声が聞こえる程に静かだった


「これが人間達が入るお風呂。広い……」


「ほんとに広いわねー! 」


「あっ、アンナ走ったら滑るよ」


隣の声はフィラーとアンナか

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