女転生者

隣の声はアンナとフィラーか……興味ないね


仮に俺好みの女だったら覗こうと試行錯誤するが

貧乳に用はない! さて、体も洗ったしサウナ行こ


嵐牙はまだいるか?


中には汗まみれになった嵐牙の姿があった


「あと何分くらいだ? 」


「6分ってところだな」


サウナの中では基本的には喋らない


無言になり体の汗が噴き出るのを感じる


聞こえるのは呼吸音と汗が下に落ちる音のみ


「先に1回水風呂行くわ」


嵐牙が沈黙を破った


「わかった」


嵐牙は立ち上がりサウナ室の扉を開いた


あっ、嵐牙ってケツにホクロがあるんだ


嵐牙がガラス越しに水風呂に入ってるのが見える


俺もそろそろ限界かも……いやまだいける! もう少し……

あと少し……


今だ!!!


サウナ室に比べるとやはり外は涼しい


軽く体を流し、いざ!


「どうした進早く入れ」


「わかってるだけど……体が動かない! 」


「気持ちいいから早く入れ」


3、2、1GO!!


冷たっ! けど気持ち~


皮膚から熱が抜けてくのを感じる


「あまり水風呂に入りすぎるなよ」


「わかった」


「おれは先にサウナに戻る」


「わかった」


それにしても水風呂は気持ちが良いな

ずっと入ってられるけど、あと2セットあるからな


水風呂から上がると少し寒い


サウナに入り、水風呂に入り、サウナに入り

水風呂に入りを繰り返すそして、その時はくる


風呂場の外にある背もたれ付の椅子に深々と腰をかけ

血液の流れを感じ、心臓の鼓動を感じ、肌に残る熱を感る……

そして二人は考えることをやめた


そう、嵐牙と進は『ととのった』のである


進は何も考えてられ無かった、いや違う

何も考えたく無かったのだ


嵐牙はこのあと女性に会うことも忘れ、

己が誰かも忘れ、異世界であることすらを忘れた


そして二人は無になった


「ねぇアンナ? 遅くないあの二人? 」


「そうね、体が冷えちゃうわね」


「受付の人ちょっといい? 」


「はい何でしょう? 」


「男の二人組がお風呂に入ってるはずなんだけど? 」


「はい、まだ中にいると思いますけど」


「中に他の人は居ますか? 」


「いえ今入ってるのは二人だけだと思いますよ」


「その二人を待ってるんですけど」


「中に入って良いですか? 」


フィラー! 包み隠さず言い過ぎよ!


「どうぞ」


「行こアンナ」


「えっ、えぇそうね行きましょう」


「二人とも何してるんだろうね? 」


「うちらを待たせるなんて! 信じられない! 」


「二人の服はあるね」


「ってなるとお風呂場ね」


「外の椅子に座ってるの二人じゃ無い? 」


「そっ! そうね! 」


なんでフィラーは平気なの!? 男の人のお風呂に

入ってるのに! あの二人が裸で下の方が隠れてなかったら!

何考えてるのうちは!!


「ねぇ二人とも? 寝てるの? 」


「もう少しゆっくりさせてくれ」


「うち達結構待ってるんだけど? 」


「あと少しで出るから」


「わかった早くしてね」


あぁ~まだ終わりたくない、この感じを永遠に味わっていたい


「進行こう」


終わってしまうのか……、だが終わりがあるからこそ美しい

終わりがあるからこそ儚い、また来よう


「どうだ進、今の気分は?」


「あぁ良い気分だ。今すぐに寝れる

だが、俺達は朝からサウナに入ったんだ?どう考えても夜だろ」


「お前が入ろうって言い出したんだぞ? 」


「なぁこれから宿に戻って寝てからギルド行かないか? 」


「さすが進冴えてるな」


「よし! 寝よう」


「って事で、俺と進は宿に戻って寝るから、お前らでテキトーに

飯を食ってくれ、ほら飯代だ」


「まぁ良いけど」


「じゃあそういう事で」


「食べ終わったらどうするの? 」


「宿に帰ってきて俺達を起こしてくれ」


「わかったわ」


「なぁ嵐牙? 」


「なんだ? 」


「お前金は残リいくらだ?」


「6000GALAだな」


「おれもそんくらいだ」


「そろそろデカイクエストを受けて金を補充しないとな」


異世界に来たってのにファンタジー感が足りない気がする、

未だに戦ってるのは狼とかだし、魔物って言うより獣だし


このままだと、けものともだちになっちゃうよ

サーバルキャットと友達になれそうだ


「じゃあまた後で」


「おう」


着替えるの面倒くさいからこのままで良いか


すす…… す……む ……進!!


この感じ今朝と同じ感じだ……

って、事は爺さんか……


今度はなんだ爺さん?


お主に伝え忘れた事がある


なんだ? 女の転生者の特徴とかか?


おっ! 察しが良いのぉ~


まぁ、よくよく考えたら特徴女って事以外なんにも

聞いてないし


じゃあ転生者の特徴を言うぞ

よ~く聞いておくんじゃ


わかった


転生者は女の二人組

片方は武器を持っていないが片方が1mくらいの杖を持っておる

髪型は武器を持っていない方が茶髪のセミショート

武器を持っている方が黒髪ロングじゃ


なるほど多分起きたら忘れてるな


まぁ嵐牙にも言ってあるから安心せい


こんなに安心できないのはなんでだろう?

嵐牙だからかな? まぁいいか。

なぁ爺さん一つ聞きたいことがある


ん? なんじゃ?


なんで女転生者の事を名前で呼ばないんだ?


あぁ~それはのう


それは?


あらかじめ名前を言うより転生者って言った方がぽいじゃろ?


確かにめっちゃぽいけど、それだけ?


うむ


もっと何かあると思ってた


何事も雰囲気は大事なんじゃよ


確かに


ほれ、女の転生者はもうじき町に到着するぞ

そろそろ時間じゃまた何かあれば呼ぶからのぉ~


爺さんがそう言うと目の前が真っ白になり

見覚えがある宿で目を覚ました


めっちゃよく寝たな……

まだ少し眠いな……


動きたくないな……二度寝でもしようかな

アンナとフィラーも来てないみたいだし、二度寝タイム突入するか


「進!! 起きてるか! 」


嵐牙が遅刻寸前で目を覚ました学生のような顔で

部屋の中に入ってきた


「どうしたんだ、そんな血相変えて」


「大変だ! ちょっと寝るつもりが俺達は6時間以上も寝ていた!

もしかしたらもう女転生者はギルドに到着してるかも知れない! 」


「でも爺さんがもう直ぐ町に着くって言ってたぞ」


「そうなのか記憶が全くない」


あぁ~なんで忘れちゃうかな~


「嵐牙、女転生者の特徴覚えてるか?」


「女は二人組、片方が武器を持っていて、黒髪ロング

もう片方の武器を持っていない方が茶髪のセミショート、

黒髪ロングの方が杖を持っていておよそ1mって爺さんは言ってたな」


「すげぇ……」


「まぁ暗記は得意だからな」


もしかしたら爺さん言い忘れたのか?


「じゃあ飯食いにギルドに行くか」


「そうだな」


金が少ないから節約しないとな


「てか、アンナとフィラーはどこに行った? 」


「そう言えばお前いつから二人を名前呼びするようになったんだ? 」


「質問を質問で返すな

今朝からだな、お前も名前で呼んでやれ」


「なんでだ? 」


「バラキュバスとかユリキュバス呼ばれるの好きじゃないっぽい」


「わかった」


「そんでアンナとフィラーはどこに行った?」


「置き手紙があったぞ、ほら」


町を見に行ってきます。 フィラー


「へぇ~まぁいっか

ならおれ達も飯食いに行くか」


「そーだな」


外には日がすっかり昇り

朝より人の行き交いが多い


「この町ってさ結構賑わってるよな」


「たしかこの町は」


「ギルドの本部がある王都の次に人口が多いらしい」


「お前その情報どこで聞いた!? 」


「クライの書庫にあった本に書いてあった」


「クライさん書庫あるのか!! 」


「正しくはギルドの書庫って言うべきか」


「ギルドに書庫があるのか! 」


「それって無料か? 」


「勿論無料だ、貸し出しは有料だけどな」


今度行こう


「なぁ進、もし女転生者可愛いかったら最高だよな」


「そうだな、可愛かったら異世界が虹色に輝く」


「今のところ男の2人のパーティーだからな」


「そうだなてか、パーティーって上限とかあるのか?」


「ゲームだとだいたい4人だよな」


「でもこれはゲームじゃない」


「と、言うことは? 」


「上限は無いのか? 」


「おそらく」


嵐牙さっきから真剣に何を考えてるんだ?


上限が無いなら可愛い人をパーティーに加えて

ハーレムを作れるかもしれない

やはり俺って天才!


「おい嵐牙がギルド着いたぞ」


「……」


「おい! 嵐牙!! 」


「……」


「ギルド着いたぞ!! 」


「あぁ! そうだな考え事してた」


「お前、前に人に考え込むと周りの音聞こえなくなるって言ったけど、

お前も考え込むと周りの音聞こえなくなってるからな」


「いやーすまん真剣に考えてたから」


「何をだ? 」


「いろいろだ」


「いろいろねぇ~」


「それより飯なに食う?」


「オムライス」


「おれはハンバーグで」


「すみませーん注文良いですかー?」


「はーいただいま~」


今日のギルドはいつも以上の賑わいをみせている

というより、町全体がいつも以上に賑わっている


「オムライスまだかな~」


「あれも違う、あいつも違う」


「落ち着け嵐牙、一緒に居る俺が恥ずかしい」


「見た感じまだ来て無いっぽいな」


「まぁ気長に待とう飯でも食ってた」


「ん!? おい進入口付近見てみろ」


「っ……!!!!」


「間違い無いよな多分」


「間違いない! あの姿は! あいつは! 」


「どうした進!! 」


紀美野雅きみのみやび!」


「知ってるのか進! 」


「知ってるも何もあいつは俺の元カノだ!」

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