サキュバス

「なぁ、進」


「なんだ嵐牙? 」


「そろそろ限界だ」


「あぁ、わかった」


ちっ、なんで俺が男のイチャイチャしてるのを見なきゃ

いけねぇーんだ! うっ、早くも気持ち悪い


「はぁ、目の保養になるな」


「地獄絵図ってこの事か」


「あぁ、まだイケメンとかならなんとかなるかもしれんが……

すまん、やはり俺には無理だ」


「おっさんや筋肉どうしのやつなんて誰が見たいんだ?

おじさん×筋肉……、ちょっとおもしろ」


「そこのお兄さん」


「どうした爺さん? 」


「ワシと結婚してくれーー!! 」


「嫌だー!!!! 」


「嵐牙ーー!! 」


「〈分身創造アバタークリエイト〉木羽嵐牙! 」


なんて、素早い変わり身! 俺でなきゃ見逃しちゃうね


「気持ち悪っ」


「自分の分身とは言え、流石に不快感があるな」


「自分の分身だから、尚更だろ」


「解除」


「なぁ、ギルドの前でヤバイ物が見えるんだが? 」


「あぁ、幻覚や、夢でも無さそうだ。さっきから

ほっぺをつねってるが痛いからな」


「キース!!! 」


「バーン!! 」


ガンッ!!


目の前には、自分の大柄な体格と同じかそれ以上に大きな大剣を振り

戦う、バーンとキースがいた


「ものすごい風圧だな」


「ここまで届くとか化け物過ぎないか? 」


俺達とあの二人まで距離が10mはあるだろうだが、

巨大扇風機が、あるかのような風圧だ


「どうする進? 」


「う~ん、退いてもらうように説得してみるか? 」


「お前あれに近づきたいか? 」


「いや、お前が行け」


「絶対嫌だ! 」


「なら、作戦その2だ! 」


「その2だと! 」


「嵐牙が、正面から突破を試みる」


「その段階で不可能だがな」


「まぁ待て、人の話は最後まで聞くもんだ」


「確かにそうだな」


「その間に俺が何もない裏口から入る」


「成る程」


「どうだ? いい作戦だろ?

その名も、【お前の事は忘れない】大作戦だ」


「お前、あそこに放り込むぞ」


「それだけはまじで勘弁」


「なら、真面目な作戦を伝えろ」


「わかった、作戦は簡単だ。裏口から入る、以上! 」


「それで行こう」


「〈草の拘束グラスバインド〉」


「なんだっ! 」


「おい! 嵐牙! 」


「わかってる! この技は! 」


「嵐牙く~ん」


クライさんも様子がおかしくなってる!


「クライさん落ち着いてください! 」


「僕は落ち着いてるよ。さぁ、進くんも一緒に愛し合おう」


「〈創造クリエイティブ〉石の剣」


「そぉい!! 」


「助かったぞ進! 」


「逃げるぞ! 」


「だが! クライはどうする!? 」


「後でなんとかしよう! 」


「逃がさないよ。〈草の領域グラスフィールド〉」


「なっ、なんだ!? 」


「足が動かない! 」


「これは、ツタ! 」


「周りがどんどん、草に覆われていく! 」


「僕の能力からは逃げられないよ」


「進、火だ! 」


「わかってるが、手元にないんだ! 」


「万事休すか」


何か手元には石の槍、ポケットには砂


「嵐牙! 分身だ! 」


「わかった! 〈分身創造アバタークリエイト〉木羽嵐牙! 」


「剣でツタを切れ! 」


「了解! 」


嵐牙の分身が嵐牙のツタを切った


「そぉら! 」


クライに向かって全力で砂を投げつける


「ん!? これは、砂かい? 」


目眩まし程度にはなるだろ


「嵐牙こっちに逃げろ! 」


「だが、進! そっちは! 」


「あぁ、そうだ! バーンさんと、キースさんが戦っている場所だ

だからこそ! 」


「無駄だよ進くん、嵐牙くん、僕の能力からは逃げられない」


「邪魔だぁ!! 」


「俺達の勝負を邪魔するな!! 」


バーンとキースが一瞬のうちに草の領域グラスフィールドを打ち消した


「バーンとキースこそ、僕の邪魔をしないでくれるかい? 」


「もうめちゃくちゃだ! 」


「この混乱に乗じて逃げるぞ! 」


「そうだな! 」


「てか、何が原因なんだ? 」


「わからないが、恐らく俺達以外おかしくなってるよな? 」


「もう一回メロウさんの所に行こう」


「なんでだ? 」


「皆おかしいが共通点がある」


「なんだ? 」


「同性にしか、興味を示してない」


「確かに! なら、バーンとキースはなぜ戦っていたんだ? 」


「それは、俺も知らん」


「って、ことは女は女にしか興味を示してない」


「そうか、襲われる危険が少ない女のメロウを頼るんだな! 」


「そういうこと」


「だが進、メロウが攻撃してきたらどうする? 」


「その時はその時」


「行ってみなきゃわからないしな」


「行ってから考えよう。それと、腹が減ったから

何か買っていこう」


「俺も喉が渇いていたらいいぞ」


「店も入れないから適当に屋台とかで食べるしかないな」


「金はどうする? 」


「置いておけばいいだろ」


「そうだな」


「って言ってるそばからケバブだ! 」


「初めてケバブ食べるぞ」


「祭りとかで食べなかったのか? 」


「祭りはカップルが羨ましすぎて行かなかった」


「わかる! 」


「そんな事より、水はどこだ? 」


「俺の横に水の入ったタンクがあるぞ」


「コップがない」


「直飲みしろよ」


「嫌だよ! おい、コップ作れ」


「俺の石だけど、良いのか? 」


「いくつかましだろ 」


「〈創造クリエイティブ〉石のコップ」


「サンキュ」


「腹が減ってたから、ケバブがすすむな~」


「俺にも1つくれ」


「ほらよ」


「サンキュ」


「ある程度食ったら行くぞ」


「おう」


「で、だが」


「なんだ? 」


「原因はなんなんだろうな」


「俺の予想だと、大型の魔法なんじゃないか? 」


「ありえるな」


「と言うか、それ以外何がある? 」


「確かにそうだな」


「ほら、お前もある程度食ったろ行くぞ!」


「まて、ケバブ数個貰っていこう」


「水の代金は500GARAくらいで良いだろ」


「ケバブ代は、1個、120GARAだから、貰った分と食った分で、

720GARAで良いだろ」


「行くぞ! 」


「おーけー」


結局、魔法なのか? ならなんで俺達は無事なんだ? 」


「メロウさん! 」


「子猫ちゃん、ここが気持ちいいのね」


「あっ、お姉様」


「ヤバイ、男の俺がこれを邪魔しちゃいけないって言ってる」


「俺もだ進さっきから、目が離せなくなってる」


「だが、メロウさん! 目を覚ましてください! 」


「ひとまずこの女をどっかにやってくる! 」


「頼んだ! メロウさん! 正気に戻ってください! 」


「あぁ~私の子猫ちゃん」


「お姉さまぁ~」


「メロウさん! カムバッーク!! 」


「魔力の高い女の子……」


「魔力の高い女の子? 」


ザパァ


「冷たッ! 」


「どうだ? 目覚めたか? 」


「ひゃー! 冷たい! 」


「メロウさん! 俺の事がわかりますか? 」


「進……くん? 」


「メロウさん! 正気に戻ったんですね! 」


「頭がぼんやりする……」


「気分はどうだ? 」


「嵐牙くん……」


「いま町全体がおかしくなってるんです! 力を貸してください! 」


「無理だよ進くん……」


「なんでですか!? 」


「これは、魔物の仕業だよ……」


「魔物!? 」


「うん、それもかなり上位のサキュバスだね」


「サキュバス!! 」


サキュバスだと!! あの男子なら1度は夢見る伝説の!!


「恐らく女の私が誘惑されたって事は、ユリキュバスがいるわね……」


「ユリキュバスですか? 」


「うん、本来サキュバスは女の子は魅了出来ないけど、ユリキュバスと言う

凄くレアなサキュバスなら女の子も魅了出来るのよ……」


「男は男にしか興味を示してないなかったんですけど?

これもサキュバスの仕業ですか? 」


「って、ことはバラキュバスもいるわね……」


「バラキュバス!? 」


「えぇ、こっちは変わった魔物で、男同士に愛し合わせる事で

そこから、生命エネルギーを吸い取る魔物よ……」


「ユリキュバスは何故、女の子同士を愛し合わせるんですか? 」


「バラキュバスと同じで、女の子同士を愛し合わせる事で

生命エネルギーを吸い取る事ができるのよ」


「サキュバス自身じゃダメなんですか? 」


「サキュバス自身の魅了だと、1人しか魅了出来ないのよ。

だから、町全体に魅了の魔法をかけたんだと思うわ……」


「なら、僕と嵐牙が無事な理由はなんですか? 」


「恐らく、こだわりね」


「こだわり? 」


「そう、相手に求めるもの」


相手に求めるもの……胸!!!


「なるほど、だから俺と嵐牙が無事な訳か」


「ごめんね進くん……、ここまでみたい……」


「メロウさん! 」


「うっ……」


「眠ったのか? 」


「多分」


「スピー……」


「あっ、寝てる」


「原因がわかったなら、あとは元凶を倒すだけだ」


「倒すって、この範囲を魅了する魔物サキュバスだぞ? 」


「確かにそうだな俺達で倒せるかだな」


「う~ん……悩んでても仕方ない。こうしてる間にも

生命エネルギーを吸われてるんだ」


「まぁ、そうだな。とりあえず探すか」


「そうだな、お前の分身も含めて探そう」


「わかった手分けして探すのか? 」


「いや、俺とお前で探そう。個人で探すのは危険だ」


「確かにそうだな。分身は一人で良いのか? 」


「分身に攻撃されてもノーダメージだろ? 」


「いや、分身に攻撃されて強制解除されると喉がめっちゃ渇く」


「任意で解除すれば喉は渇かないのか? 」


「まぁ、創る時に渇くが多少だな」


「まぁ、水があるから分身は単体で動かせよう」


「わかった。で、どこから探す? 」


「手始めに、町の中央から探そう」


「りょーかい! 」

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