三章 霊媒師アンネ その3
「ようやく理解したか。自分が今、何を見ていたのか」
俺はにやにやせずにはいられなかった。やっぱり何も気づいてなかったのかよ、こいつ。
「ば、ばっかじゃないの! なんでこんな画像用意してるのよ! 気持ち悪い! 変態!」
「俺は自然に山に生えているキノコと、日本の伝統文化の画像を見せただけだぜ?」
「何言ってるのよ! どっちも変な形じゃない!」
「そうだな。どっちも完全状態の男性自身と同じ形だ。でも、お前は祭りの解説読むまで気付かなかったよなあ? 変だよなあ? お前、恋愛経験豊富だって言ってたのにさあ?」
「そ、それは……」
たちまち、紅葉は気まずそうに視線を泳がせた。俺はますますにやつかずにはいられなかった。こいつ、やっぱりそうだ。恋愛経験豊富だなんて、嘘っぱちだ。そう、卑猥画像を見せて反応をうかがう、俺の処女診断テストは大成功だったってわけだ。
そう、実は俺はあの夜、初音に電話して確かめていたのだ。小日向紅葉という女子に関する噂の真偽を。男をとっかえひっかえとか、パパ活女とか、本当の話なのかと。
すると、初音はさも適当にこう言ったのだ。「さあ? パパ活のことはよく知らないけど、彼氏が途切れないのは本当みたいよ。本人がよく周りに自慢してるみたいだし」俺はそれを聞いて確信した。本人が自慢している、それはすなわち、見栄を張って嘘を言っているだけなのだと。本当は恋愛経験ゼロだけど、他の女子達とは恋愛の話しかしないし、ほんとのことなんて言えるわけない……。思春期の女子にはそういう心理があるのだ。俺には姉がいるが、やつの所持する少女漫画には、そういう頭の悪い女がよく登場してたような気がするし。
そして、おそらく、パパ活うんぬんは、本人が彼氏自慢しまくってることから派生した実体のない噂だろう。本当にパパ活で楽に稼げるなら、時給の安いゲーム屋のバイトなんか始めるわけないしな。
「お前さあ、本当は男とヤったことなんてないんだろ?」
俺はすかさず追い打ちするが、「あ、あるわよ!」紅葉は完全にむきになっているようだった。
「じゃあ、なんで、祭りの解説読むまで気づかなかったんだよ。本当はイチモツの真の姿を見たことないんだろ」
「それはその……いつもは電気消してするから」
「いや、電気消しても、手で触ったりはするだろ? アレの形はなんとなくわかるだろ?」
「そ、そんなのいちいち気にしてないもん! 私はあんたみたいな変態とは違うの! 気持ちが通じ合ってればそれでいいの!」
「気持ち、ねえ……」
俺はもう笑いをこらえることができなかった。こいつ、いくらなんでも言い訳が下手すぎるだろ。素直に嘘ついてたって認めりゃいいのに。
「はいはい。わかったよ。お前のエア彼氏だか脳内彼氏だかは、バナナみたいな綺麗な流線形のチンコしてるんだろ。それでいいよ、もう」
「バ、バカにしないでよ! バカのくせに!」
そう叫ぶ紅葉の顔は真っ赤で、もはや涙目だった。
と、そのときだった、「あのー」と、すぐ近くから声が聞こえた。振り返ると、俺達から少し離れたところに、一人の女の子が立っていた。俺達と同じ制服を着ていて、長い赤毛をツインテールにまとめた少女だ。顔立ちはそこまで整っている方ではなかったが、小動物のような人懐っこい愛くるしさがあった。しかし何より、ひときわ目を引くのはその胸だった。でかい。腰回りや脚などはそんなにふとましくないのに、胸だけが異常にでかい。最低でもEカップはあるんじゃないだろうか。
「もしかして、君が霊媒少女?」
「あ、はい。一応、あたし、霊媒師見習いのアンネです」
と、アンネと名乗る少女は、ポケットから名刺を出して、俺と紅葉に渡した。確かにそこには名前とメルアドと霊媒師見習いという肩書があった。フルネームは「大分安寧」というらしい。
「だ、だいぶあんね?」
「おおいたあんね、です。名字の読みは県名のほうです」
「そうか……なんかこう、だいぶあんねって感じがするんだが」
おっぱいでかいし。マジでだいぶあんね!って感じだし。
「それで立川先輩、さっそくですが霊のお話を――」
「ちょっと待って」
と、そこで紅葉が俺達の間に割って入って来た。そして、いきなり――アンネの胸を両手でわしづかみにした!
「あ、あの、急に何を――」
当然、アンネは素っ頓狂な声を出すが、紅葉は「ただのあいさつよ。はじめまして」と、もみもみもみ、と、手を動かしながらわけのわからないことを言うだけだった。
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