三章 霊媒師アンネ その1
アーサーを説得した後、俺はすぐに霊媒師のばあさんの家に電話した。かつて俺の左手の封印のお札をくれた人だ。霊のことを相談するなら専門家に限るというわけだ。
しかし、電話して出てきた、ばあさんの娘だというおばさんに事情を話してみると、もうそのばあさんは霊媒師を引退したということだった。年が年だから、だそうだ。
だた、代わりに孫娘(そのおばさんの娘)が霊媒師の技能を引き継いだということだった。さらに詳しく聞くと、なんと俺と同じ高校に通っている一年生らしい。意外と世の中狭いんだな。
そこで俺はその女の子に俺のことを伝えてもらうよう、おばさんに頼んで電話を切った。おばさんによると、近いうちに折り返しこっちに連絡が来るということだった。
そして、その電話を切って少しして、知らない家電の番号から俺のスマフォに電話がかかって来た。出ると、「あ、あの、立川さんのお宅でしょうか」と、少し緊張したような、聞き覚えのある声がした。紅葉だった。
「なんだお前? 俺の番号どこで知ったんだよ」
「あ、何だ、あんたしか出ないのね、この番号。緊張して損したわ」
「まあ、俺専用のスマフォだし……つか、俺の番号どこで」
「さっき、お店来た時、ゲームの買い取り同意書に書いたでしょ」
「いや、書いたけど、それそのまんま使うって、店員としてアウトじゃね」
「うるさいわね! 私だって好きであんたに電話したわけじゃないんだから」
「何か用があるのか?」
「まあね。あんた、さっきテレーズと話をして、幽霊は成仏させたほうがいいって言ってたでしょ。それって、何かアテでもあるのかなって思って」
「ああ、それだったら……」
かくかくしかじか。霊媒師の女の子にお祓いを頼めそうだということを話した。
「お前もついでに祓ってもらえよ。俺が向こうに紹介してやるからさ」
「そうね。テレーズのためにはそうしたほうがいいのかも……」
紅葉はあまり気が進まない感じだった。たぶん、テレーズと別れるのが寂しいんだろう。
「別に嫌なら、無理しなくてもいいんだぞ――」
「いや、いいわよ。そのお祓い、私も受けてやろうじゃないの!」
紅葉はなんだか決闘の申し込みをされたみたいな、勇ましい口調だ。
「テレーズと別れるのは辛くないのか?」
「そ、そりゃ……ちょっとは。でも、テレーズは私から離れたがってるんでしょ。だったら本人の意思を尊重してあげるべきじゃない」
「そうか。じゃあ、向こうから連絡来たら、お前のことも話しておくわ」
俺はいかにも強がっている紅葉に吹き出しそうになるのをこらえながらそう言うと、電話を切った。
あいつ、かわいらしい外見とは裏腹に、意外と意地っ張りなんだな。スマフォを机の上に置いたところで、ぼんやり考えた。そして、ふと、ゲーム屋でのトンチンカンなやり取りを思い出した。恋愛経験豊富な女のはずなのに、エロの知識は小学生レベルって。おかしいだろ、いくらなんでも。
あいつ、もしかして……。俺は再びスマフォを手に取った。そして、初音に電話した。
「悪い、夜遅くに。お前にもう一度確認しておきたいことがあるんだが――」
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