一章 邪気眼少年と眼帯少女 その3
「い、いや、別に……こ、ここで組織の人間と待ち合わせをしてるだけだから」
とっさにスマフォを耳に当て、それっぽいことを言うが、「嘘、パンツ見てたんでしょ」と一瞬で看破された。おお、この眼帯美少女、鋭いぃ……。
「パ、パンツという布切れが世界の破滅という懸案事項より優先されるわけがないだろう。フ……フフ……」
それでも涙目で必死に抵抗しちゃう俺だった。
「けっこーうちの学校じゃ有名だもんね。ここならパンチラ見放題って話」
眼帯美少女はその場でしゃがんで、俺を見降ろし、意地悪そうに笑った。そ、そんなところで、そんな短いスカートでしゃがむと、俺の位置からではいろいろきわどいことになるんだが! 思わず、その脚の間の暗がりのほうを見てしまう俺だった。むう、パンティが見えそうで見えない……。
「やっぱり見てるじゃない。童貞キモメン君」
「ど、どうて……」
可愛い顔してなんてことをさらっと言うんだろう。ますます興奮、じゃなかった恥ずかしくなってくるじゃないか。
「あ、あなたって、痛い中二病で有名な人だっけ」
と、彼女は俺の左手の包帯に気付いて、興味を持ったようだった。そのまま立ちあがり、こっちに降りてきた。うわ、童貞と俺を罵る美少女が近づいてくるぅ……。ドキドキしてしまう。
「何、顔真っ赤にして。どこが中二病よ。普通の変態エロ男子じゃない」
彼女は俺のすぐ前まで来ると、無造作に手を伸ばし、熱くなってる俺の頬を軽くなでた。一瞬、その体からとてもいいにおいがした。
「ち、ちが! 俺は決してやましい気持ちで君を見ていたわけでは――」
「そんなに見たいんなら、見せてあげてもいいわよ」
「え」
「ここで。すぐ近くで」
眼帯美少女はこれ見よがしに両手でスカートのすそを掴んで、少し持ち上げた。なんと! いきなりパンツ見ていいって許可が出たぞ! ますますドキドキしてしまう……。
「い、いやでも、そんな形で正々堂々見ることに何の意味があるのか。パ、パンチラというものはあくまでチラリズムというものがあって完成――」
「見たくないの? じゃあやめるけど」
「見たいです! やめないでください、お願いします!」
間髪を入れず力いっぱい叫んでしまった。そりゃそうだ。どんな形であれ、美少女のパンツは見たいに決まってるじゃあないか!
「わかったわ。でも、その代り、私もあなたの、普段人に見せないようなところを見たいんだけれども」
「え」
とっさに股間をおさえてしまったが、「そこじゃないわよ」と即座に否定された。くすくす笑われながら。
「私が見たいのは、あなたのここ」
と、彼女は指差したのは俺の左手の包帯だった。
「こ、これは……」
さすがに見せるわけには。とっさにそこを右手で押さえて少し退く。
「どうして? どうせかっこつけで巻いてるだけで、何もないんでしょ?」
「いや、これはガチの封印で」
「はいはい。封印とかそれっぽい単語言いたいだけなんでしょ。知ってるから」
眼帯美少女は手を伸ばしてきて、強引に俺の左手から包帯を剥ぎ取ろうとした。やべえ! とっさに左手を後ろに下げ、その手をよけた。
「なんで逃げるのよ。それ取ったらパンツ間近で見せてあげるって言うのに」
眼帯美少女は再びスカートのすそを少し持ち上げた。これ見よがしに。
「うう……」
とたんに俺は大いに心が揺れ動いた。美少女の生パンティを間近で見れるチャンスは今しかない。で、でも、交換条件がこの左手の包帯を解くってのは……。これだけは、人前で外しちゃいけないんだ。絶対に、何があっても!
「だ、だめだ! これを外すことは世界の平和を脅かすことなんだ!」
「さっきは世界の破滅がどうとか言ってたわよね。痛い人ってほんと好きよねえ、世界がどうとかって大げさな言葉。世界の存亡とパンツに何の関係があるのかしら」
チラチラ、ヒラヒラ。眼帯美少女はいっそうスカートのすそを持ち上げ、つやっぽい流し眼で俺を見る。
た、確かに世界とパンチラには何の関係もない。俺、このまま見ちゃってもいいんじゃないかな……心がまた激しく揺れ動く。
と、そこで、
『幸人殿、さっきから何を動揺してるでござるか?』
やつの声が脳内に響いた。そしてそこで俺は我に返った!
「いや、やっぱり無理だよ。ごめん、俺のことは忘れてくれ!」
断腸の思いで叫ぶと、そのままダッシュでそこから離れた。苦しかった。悲しかった。辛かった。切なかった。美少女のパンツが見れるというのに、俺はどうしてそれを断らなければならない星の下に生まれたんだろう……。
『おや、幸人殿。今度は走りながら泣いておるでござるな? また何があって――』
「うるせえ、バカッ! 全部てめえのせいなんだよ!」
左手の包帯を叩きながら叫んだ。痛い。しかも当の本人は『どういうことでござるか?』と何もわかってない様子だった。ちくしょう、どうしてこんなめんどくさい体質になっちまったんだろう。また涙目になってしまう俺だった。
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