第4話物語る者

 バスはすぐに来た。

 佳那汰さんは先に乗り込んで、人数分の料金をIC乗車券で支払った。

 俺たちは佳那汰さんに続いて乗り込み、それぞればらばらの席に座った。でも何を思ったのか、箒木が移動してきて、俺の隣に座った。

「……皆戸くん」

「ああ……」

 俺が返事をすると、バスが走り出した。

 エンジンの音、つり革の軋む音、タイヤが地面を噛む音。そんな雑音の響く中、箒木は俺の顔を覗き込み、何か真剣な顔をしていた。

「箒木?」

 箒木が何も言い出さないので、俺の方から声をかけた。

「……あのね、皆戸くん」

「どうした?」

「あの……」

「うん」

「……わたし、こわいの」

「怖い?」

 箒木は両手をきゅっと握った。

「……作者が実在すると分かるのが、怖い」

「え?」

「……何だか怖いの。もちろん、今から会うのは……わたしの作者じゃない。でも……作者にはかわりない人」

「箒木は……」

 俺は、千代崎さんに問いかけ、佳那汰さんに問いかけ、サチに問いかけたことを、箒木にもぶつけた。

「箒木は、作者に会いたいって、思わないのか?」

 その問いに、箒木はふるふると顔を振った。

「……会いたくない」

「どうして?」

「怖いの。……どうしても、怖い」

「怖いって?」

「だって……」

 箒木は暫く口をつぐんだ。

「……わたしの物語は、人が死ぬの。いっぱい。いっぱい……。わたしも、死んだ」

「箒木……」

「わたしにとって、作者は死神」

 その静かな声は、俺だけに届いたみたいに感じた。

「わたしにとって、作者は温かい人ではないの。みんなを殺した。わたしの大切な人も……みんな。でも……そんな人が、わたしの作者なのは……かわりなくて。それも、現実世界の人間で。いつか死ぬ……存在で」

 箒木は俺にしか聞こえないような小さな声で、そう言った。

「……わたしたちと同じように、いつか死ぬ、そんな弱々しい現実を背負った存在が、わたしたちの……作者で。……怖いの。そんな弱い存在がわたしたちの作者だと知ることが。作者の実在を知ることが」

「……箒木」

 俺は何と言っていいのか分からなかった。

 だから考えて、考えて、ない言葉を絞り出して、それきり黙り込んだ箒木に声をかけた。

「……ごめん。俺には、それがどういう恐怖なのか、分からない。箒木は……そんなに、怖いのか」

 箒木はこくりと頷いた。

「……殺そうと思えば殺せてしまう、そんな存在が作者だと、知るのが、怖い」

 その言葉に、俺は何も返す言葉がなかった。

 箒木の言葉に、

 言いようのない悲しみを感じて。

 殺そうと思えば殺せてしまう。

 箒木は、作者は死神だと言った。

 物語を紡ぎ、登場人物にとっては絶対的な存在である、死神。

 しかしその存在は、いつかは死ぬ運命にある弱い存在で。

 物語の中で死んだ、箒木と変わらない存在で。

 そして佳那汰さんが言ったように、その死は、世界にとって些末で。

 箒木は、箒木の力なら、作者を……殺せる。

 箒木は恐れているんだ。

 感情に駆られて作者を葬り去ることが。

 そしてその死があっけないことであると分かるのが。

 箒木が抱えている作者への感情に対して、作者があまりにも小さいと知ることが。

 ……怖いんだ。

「……そっか」

「……うん」

 箒木は小さく頷いた。

 箒木はそれきり黙り込み、何も言わなくなった。ただ下を向いて、きゅっと両手を握っていた。

 俺はその両手を見ていて、不意に、その両手が血に染まったらということを考えた。

 箒木の死がどんなものだったのか、俺は知らない。箒木の大切な人達がどんな死に方をしたのか、俺は知らない。でも、その両手は血を、死を、知っている。

 箒木の手は。知っている。

 物語を生きるということは、そう言うことなんだ。

 それは一体どういうものだろう。

 作者。

 何かを考え、物語を物語った存在。

 何を考えて、物語を紡いだのだろう。

 俺は物語が好きだ。非日常を運んできてくれる、ささやかなその存在が好きだ。でも。

 俺は箒木の両手を見ながら、キオトのことを考えた。キオトは今、後ろの方の席で窓から外を見ながら鼻歌を歌っている。その鼻歌は、俺たちにしか聞こえていないようだった。俺と、物語の登場人物たちだけに。

 キオトは聞かせているんだろう。心にあふれる喜びを。作者を絶望に陥れる、その瞬間の想像を。

 キオトは、

 物語の登場人物。

 そして死んだ。

 だから、その死に絶望して、現実世界に来た。

 キオトにとって、自分の死はどんなものだったのだろう。

 作者をこんなに憎むほど、自分の死に絶望したのだろうか。それとも、死よりも絶望的なものが何かあったのだろうか。

 俺には分からない次元だけれど、キオトは……。確かに、絶望したんだ。

 キオトは物語で何か失っただろうか。

 もしくは何かを得たが故に死に絶望したのだろうか。

 そういうものを与えた作者を、こんなに憎むなら。

 キオトは、作り出された自分自身を、もしくは物語を、愛したのではないのか。

 そんな気がした。

 キオトにも、死に絶望するほどの何かの感情があったはずなんだ。それを何と名付けて良いのか分からないけれど、一つ名前を付けるとしたなら、それは愛情かも知れない。

 俺は箒木の両手から顔を外して、窓の外を見た。

 見たことのない街を走っている、と思った。

 大きな道路を走り、他の車と共に進路を共にしながら、そしてすれ違いながら、走る。信号で何度か止まりながら、何度か曲がりながら、走る。

 この世の厄災を乗せて。

 キオトは作者に会ったらどうするつもりなのだろう。絶望を与えて殺す。そのつもりなのは理解している。でも、その頭の中にある与えうる限りの絶望とは、何だろう。

 やがてバスは減速し、止まった。バス停のある場所だった。

「着いたわよ」

 佳那汰さんが振り向いてそう言った。

 俺たちは、他の乗客と一緒にバスを降りた。

 そうして顔を上げると、青い空と、赤い門があった。その向こうに、煉瓦造りの安田講堂。

 東京大学なんて、俺にとっては別世界の学校だ。ここに足を踏み入れるなんて、それこそ非日常に片脚を突っ込むようなものだ。

「さて。行こうか」

 千代崎さんが率先して足を踏み出した。千代崎さんは東京大学だろうが何だろうが、そんなもの何の権威なんてないと思っているかのようだった。その堂々とした感じは、確かにこの世のものでないような感じを受けた。

 狐憑き。神に近いものが憑く者。

 千代崎さんは、何を知っている?

 赤い門をくぐると、千代崎さんはきょろきょろと周りを見回した。

「ナリミヤキオトはどれかな。……ああ、あれだね」

 千代崎さんがあまりにもあっさり見つけるので、俺は心臓がどきんとした。

 千代崎さんの視線を追うのが、怖い。

 しかし俺は反射的に千代崎さんの視線を追っていた。

 そこには、大きな鞄を左肩にかけた、やや髪の長い学生風の人がいた。さすがに大人っぽく見える。もしかしたら千代崎さんよりも年上かも知れない。

 でも、

 どこにでもいるような青年に見えた。

 どこにでもいるような、平凡な風体。

 物語なんて縁がなさそうな。

 そんなものにどれほどの興味と情熱を傾ける人なのか、見た目では分からない。けれど、あの人がキオトの作者なんだ。

 作者、なんだ。

「あの人が作者なのね!」

 キオトは嬉々とした声を上げた。

 それに対して、千代崎さんはこともなげに頷いて見せた。

「ナリミヤキオトに間違いないね。どれ、声をかけてみようか」

「ええ! ええ! そうね!」

 千代崎さんが歩き出したので、キオトは軽やかな足取りで千代崎さんの後を追った。俺たちも、それに従うように歩き出す。

 ……でも。

 何だろう。

 変な感じがする。

 架空の存在は、作者に会えない。

 知覚もできない。

 唯一会うことができるとしたら、作者による物語の改編の可能性が一つもないことが条件。

 しかし……。

 キオトはナリミヤキオトを知覚できている。実に容易に。それは、物語の改編の可能性がないことを示唆している。

 ナリミヤキオトは、キオトに会っても、物語を改編しないのだろうか?

 本当に?

 ……本当に?

 でもキオトがナリミヤキオトを見れると言うことは、物語の改編の可能性がないことを示しているわけで……。

 俺には、何だか分からなくなってきた。

 ナリミヤキオトだって、作者にしたって、生身の人間だろう。

 それなのに、自分の物語の登場人物と出会っても、本当に何の感情も抱かないものなのだろうか? それとも、やはり東大生だから、キオトと会っても動じないか、信じたりなんかしないのだろうか。

 いや、でも、ナリミヤキオトは呟いたではないか。

 物語が現実になったと。

 では、キオトのことも、

 信じる?

 なら、物語にも影響が出るのではないか?

 しかし……?

 思考が堂々巡りした。全然、何が何だか分からない。でもキオトは何も疑問に思っていない様子だ。ただ、作者を絶望に陥れ、命を奪うことだけを考えている。そしてその先に、現実世界の崩壊をもたらすことを、考えている。

 キオト……。

「やあ。ナリミヤキオトさんだね」

 千代崎さんが、青年に声をかける。

 声をかけられたその人は、驚いたような顔をして立ち止まり、やや動揺したような顔をした。

「え?」

 そして、疑問の声。それはそうだろう。

「僕は千代崎灰音という者だ。少し用があるのだが、いいかね」

「え……でも僕……」

「分かっているよ。司書の仕事があるんだろう」

 司書?

 え、司書?

 学生風に見えたけれど、千代崎さんは司書と言った。では、ナリミヤキオトは、学生ではない?

 ナリミヤキオトはかなり困ったような、怪しい人物に絡まれたと思っているような、そんな顔をしていた。

 そんなナリミヤキオトの様子を、千代崎さんの後ろから、キオトがひょこんとのぞきこんでいる。うふふっ、とその喉が鳴った。

「仕事が始まるまでの間だけで良いよ。少し時間をくれないか。こちらの少女が、君に用事でね」

「あの……でも……、あの、あなたたち、誰なんですか?」

「うふふ! そんなこと、すぐに分かるわ!」

 キオトが笑い声を上げる。その頬は上気して、何か誘うように見えた。

 絶望に誘うような顔。

「ね? ナリミヤキオトさん?」

 ナリミヤキオトはそれでも納得できないような顔をしてキオトを見ていた。

 そんなナリミヤキオトを見て、今度は佳那汰さんが声をかけた。

「大事な話なのよ。少しで良いわ。司書室で話をさせてもらえないかしら。人払いはするから。……あなたの小説のことよ」

「僕の小説?」

 ナリミヤキオトは目を丸くして、ようやく話を聞く気になったかのような顔をした。

「どうして? 誰にも見せたことがないのに」

「でもあたしたちはあなたの小説に用があるの。少しで良いから、時間をちょうだい」

 佳那汰さんがもう一押しすると、ナリミヤキオトは少し考え込んで、それから頷いた。

「分かったよ。こっちへ来て」

 それはあっさりとした承諾だった。

 そうして案内されたのは、東京大学の図書室。その中にある司書室だった。

 司書室は黴びた本のにおいがしたけれど、全体的に雑然としているものの片付いている印象で、ちょっと非日常的などきどきを感じさせた。

 ナリミヤキオトは慎重に司書室の扉を閉めると、荷物を机に置いて、もっと慎重な顔をして俺たちを見た。

「それで……小説のこと、どうして知ったんだ?」

「それは、あなたが作者だからよ!」

 キオトはぴょんと一歩踏み出して、両手を広げた。

 そう言われると、ナリミヤキオトは複雑そうな顔をした。

 ……どうして、そんな顔をする?

「作者……。作者か……。僕に、そんな資格があるのかな」

 何を、

 何を言ってる?

 言っていることがよく分からなかった。

 作者と名乗るのに資格がいるのか? 確かに、キオトの物語を物語ったのに?

 キオトはぽうっと頬を赤くして、恍惚と笑った。

「キオト・クルウルウ! その名前に覚えがあるでしょう?」

「キオト・クルウルウ? どうして、その名前を?」

「うふふ!」

 キオトははっきりと答えなかった。

 ナリミヤキオトは何か考えているようだった。キオトを見つめて、黙り込む。

 キオトの緑の髪。緑の目。輝くような肌。

 キオトを見つめている、ナリミヤキオトの、どこか真剣な目。

 何を考えているだろうか。

 キオトのこと、分かるだろうか?

 自分が物語った、物語の登場人物だと?

 分かる?

 分からない?

 どっち?

 ナリミヤキオトは急に意を決したような顔をすると、荷物から一台のノートパソコンを取り出してきた。

 そしてそれを開き、電源を入れる。

「その名前を知ってるってことは、僕が何を作ったのか知ってるってことだね。誰が漏らしたのかな、全く……誰にも話していないつもりだったけど。どこから情報が漏れるか、分かったものじゃないな……」

 その声はやや恥ずかしそうだった。恥ずかしさをごまかすために、ナリミヤキオトは長々と独り言を呟いて、立ち上がったパソコンのマウスパッドを操った。

 そうして、クリックすること、数回。

 ナリミヤキオトは机にノートパソコンを置いて、その画面を俺たちに見せた。

「一人でこっそり作ってたんだ。でもばれてたなんてね……」

「……え? ……これは?」

 俺は画面を覗き込んで、疑問符を発した。

 そこには二つのウィンドウが表示されている。

 一つは、何か記号の羅列が書き込まれたもの。

 もう一つは、

 白いウィンドウに『untitled_1』とだけ書かれたもの。

 『untitled_1』。

 これが、これが、

 キオトの物語?

 そうなのか?

 キオトの物語には……

 タイトルが、ない?

「これが、一作目の小説だよ」

 ナリミヤキオトはそう言った。

 その言葉を聞いたキオトは、

 全くの無表情で、画面を見つめていた。

 自分の物語にはタイトルがないという事実。

 それを、どう受け止めているだろう?

「でも駄作に仕上がったな。まあ、初めて組み上げたものだから仕方ないか……」

「組み上げた……?」

 変な言い方だった。俺が問いかけると、ナリミヤキオトは少し恥ずかしそうに顔を赤くして、首を掻いた。

「僕は……小説を書きたかったんだけど。でも、自分に文才がないと分かったのは小学校の時の創作コンクールでね。それ以来、自分では小説を書かないと決めたんだ。だから、小学校以来、一切小説は書いてない」

「え……でも、じゃあ、これは……?」

 箒木が動揺したように言う。

 確かにそうだ。

 ナリミヤキオトは、確かに、これが一作目だと言ったではないか。

 それなのに、小学校以来書いていない?

「……これが……小学校の時書いた小説なんですか……?」

「いやいや、その時の小説は、もう捨てたよ」

「それじゃあ……?」

 ナリミヤキオトは問いかける箒木を見て、それから恥ずかしそうにフフッと笑った。

「僕には小説を書く力がないって、本当に思い知ったんだ。小説を書く資格なんてないって。でも、おもしろい物語を作りたかった。本が好きで……。司書なんかになったけど、本当は小説家になりたくてね……。でも、小学校の時にそれは無理なんだと分かったから、その夢は諦めた。その代わり、おもしろい物語を作るソフトなら作れると思ったんだ」

「ソフト?」

 今度はサチが疑問符を発した。多分、単純にソフトがなんなのか分からなかったのだろう。

「そう。ソフト。物語を自動生成するプログラム」

 プロ……グラム……。

 嫌な予感。

 嫌な予感がする。

 ナリミヤキオト。

 キオトの物語の作者だと思っていた。

 でも。

 ……嫌な予感がする。

「僕にはおもしろい物語は作れない。でもコンピュータになら、人間が思い付かないようなおもしろい物語が作れると思ったんだ。だからそのプログラムを組んで、ランダムに言葉を入力して、それを元にして物語を自動生成させたんだ。……でも、だめだったな。できたのは陳腐な話さ。一応話は通るけど、おもしろいとはとても言えない。自分の名前も入力したのに、主人公にはならずに、敵役になるし。しかも言っていることがよく分からないキャラクタになったしね」

 ……キオト。

 キオトの顔を、

 見ることができない。

 キオト。

 キオト、

 キオトの作者は、

 キオトはパソコンを見つめたまま、ただそこに立っていた。

 ……見なければ。

 俺も、キオトの顔を見なければ。

 キオトの現実を、俺も、

 受け止めなければ。

 俺は意を決してキオトを顔を見た。

 キオトは、

 絶望したような顔をしていた。

「ワタシの作者は」

 キオトの作者は

 ……言ってはいけない。

 でもそれは

「機械」

 ……それが真実。

 キオトの作者は、

 人間では……

 ……ない。

 ナリミヤキオトは作者ではなかった。ただ、物語を物語る、ソフトウェアを作っただけ。

 人間ではないものが作者なら、物語の登場人物が目の前に現れたところで、何の感情があるだろう。自動生成された物語を、自主的に改編しようなどとできるわけがない。

 『untitled_1』と適当に名付けられた物語。

 人間によって陳腐な駄作と判断された物語。

 キオトは機械によって作られた。

 機械に絶望があるのか。

 命があるのか。

 キオトが望んでいたように、絶望を与え、命を奪うなんて、できるのか。

 壊れることしか、できないのに。

「ワタシ……ワタシ、ワタシは……」

 キオトは天井を見上げた。

「ワタシは……みんなと仲良くなりたかった。だってそのほうが、裏切ったときの絶望が深いから。もっともっと絶望してほしい。もっともっと壊したい。もっともっと」

 その瞳には涙がなかった。

 完全に乾いたような色をして、緑の瞳が天井を見つめていた。

「ワタシは世界を壊したかった。だってそういう存在として作られたから。壊して壊して、滅ぼして。そうしたかったのに。でもそれが叶わなかったから。だからワタシは扉を開けたのに」

 ……キオト。

「それなのに、それなのに、ワタシは、ワタシはそういうふうに作られたのに、それを果たすこともできずに、こうして現実世界でも、ワタシを殺した作者を殺すこともできないなんて」

 キオトの髪が、香る。

 蠱惑的な香り。

 けれど悲しい香り。

「作者が……機械」

 キオトの声だけが聞こえる。

 作者による物語の改編の可能性がないのは、

 作者が人間ではないから。

 物語は機械の中で、永遠の安寧を手に入れた。

 その永遠の安寧は、キオトにとっては永遠の絶望と同じこと。

 だって作者なんて、

 存在しなかったも同じことなんだから。

 作者が機械。

 作者が機械。

 ……作者が機械。

「……望みを叶えさせてもくれないなら。どうして、つくったの」

 キオトの足下が歪んだ。

 これは。

 ――世界の歪み!

 歪みは一瞬にして司書室を飲み込んだ。ナリミヤキオトは突然のことによろめいて尻餅をつき、怖いものでも見るような目でキオトを見た。

 現れたのは、廃墟と化した高層ビル群。

 その向こうに見える、揺らめく影。

 揺らめく影はやがてはっきりと輪郭を現し、少年少女の姿になった。少年少女たちは憎んでいるような顔でキオトを睨んでいる。その手に大型の拳銃みたいなものを構えて。

「どうして……どうして、どうして」

 呟くばかりで、キオトは戦う気配を見せない。

 戦わなければ、キオトが消える!

「な……なんだこれ、なんだよこれ!」

 ナリミヤキオトが声を上げる。それはそうだろう。自分が組み上げたソフトウェアが自動生成した、その物語の中に飲み込まれたのだから。

「守ります」

 サチがナリミヤキオトの前に躍り出て、くるりと一回りした。すると氷の槍が生成され、少年少女へと向かって飛び出した。その瞬間ナリミヤキオトは悲鳴を上げて顔を覆った。氷の槍は少年少女たちを貫き、廃ビル群に突き刺さった。

 氷の槍に貫かれた少年少女たちは揺らめいて影となって消えたが、新たな影が現れて、また少年少女に姿を変えた。これではきりがない!

 これはキオトの物語だ。それがキオトを殺そうと現れているもの。だから、キオトが戦わなくては意味がない!

 箒木もナリミヤキオトを守るため、体に青い光を走らせた。脚に機械の翼を生やし、空へ舞い上がる。セーラー服に両手を入れると、左右の手にライフルのような長身の銃を握り、それを少年少女たちに向けて撃ち放った。しかし少年少女たちは影になっても、再び姿を取り戻し、キオトにその銃口を向けてくる。

「なんだよこれ! なんだよこれえ!」

 ナリミヤキオトは錯乱して絶叫している。そうなる気持ちは分かる。突然現れた非日常が、自分の命を奪うかも知れないことを、理解しているんだ。

「羊太郎!」

 突然佳那汰さんが俺の前に躍り出て、右手を前に突き出した。その瞬間、いつの間にか発射されていた弾丸が佳那汰さんの目の前で止まった。

 佳那汰さんはそのまま目に力を込めると、弾丸を少年少女に向けて跳ね返した。被弾した少年少女たちは影となって消えたが、また新たな少年少女たちが現れてくる。本当に、このままだときりがない。

 キオトは、まだ乾いた色の目をして、空を見つめている。

 キオトが滅ぼしたかった空。

 キオトが裏切りたかった少年少女たち。

 しかしそれが叶わなかった世界。

 キオトを殺そうとする世界。

 ……キオト。

「少年」

 不意に背中に声がかかった。振り返ると、千代崎さんがゴホゴホと咳をして、にやっと笑ったところだった。

「これがキオトの現実だ。望んだことなど何一つ叶わない。裏切りたい。絶望させたい。殺したい。滅ぼしたい。何一つ」

 キオトは。

 キオトはそういうふうに作られたはずなんだ。

 裏切るように。

 絶望させるように。

 殺すように。

 滅ぼすように。

 キオトはそれを熱望していたはずだった。

 そうしたいと夢見ていたはずだった。

 キオトの望みは……。

 絶望と滅びのはずだったんだ。

 でもそれが叶わない。

 だから、死んだときに扉を開けたんだ。

 現実世界で、今度こそ絶望と滅びを果たすために。

 それなのに。

 現実世界ですら

 作者が……

 絶望も

 死も

 知らない存在。

 それを知ったとき、キオトは、自分の絶望という新たな扉を開けてしまった。

 絶望させる存在なのに、自分が絶望する側になる。

 決して叶わないと約束されている。

 この世界にもキオトの望みが叶う隙がない。

 世界は……キオトの望みを、折った。

 変えることのできない現実を突きつけることによって。

 千代崎さんは知っていたんだ。キオトの望みなど、叶わない。そしてキオトが、絶望の扉を開けると。

 俺は千代崎さんと見つめ合った。

 俺たちの周りでは、サチが、箒木が、佳那汰さんが戦っている。佳那汰さんは瓦礫を浮遊させてビルに当て、ビルを崩壊させることで少年少女たちを潰した。しかし別の場所に影が現れ、新たに少年少女が現れる。

 戦っても戦っても、意味などないかのように。

「……千代崎さん」

「ああ」

 千代崎さんは目を細めた。その目は笑っていた。

「どうして、千代崎さんは、こうなることが分かっていて、こんな結末になるようにしたんですか」

 瓦礫の崩れる音が聞こえる。戦いは激しくなるのに、キオトは全然そんなものなど見えていないかのようだ。

「君は、優しいな」

「いや、俺は……」

「現実世界を守るためさ」

「え?」

「現実世界を守るためなら、僕は誰が犠牲になろうとも構わないのでね」

 冷酷な言葉に聞こえた。

 でも、千代崎さんの人格とかけ離れているとは、思えない感じもした。

 サチが殺されかかると分かっていて、俺たちをキオトにけしかけたみたいに。千代崎さんには、そういう一面があるんだ。

 現実世界を守るためなら。

「どうして……?」

「僕は君に、自分の物語と登場人物たちを愛したと言ったね。それと同じように、物語を生みだした現実世界のことも愛しているんだ。確かに、作者には思うところはある。しかし、矛盾すると思うかも知れないが、物語る者をも愛さずにいられないところがあってね」

 千代崎さんは小さく咳をした。

「作者を守るために、現実世界を守る。僕が現実世界に来たとき、決意したことだ」

 大きな音がする。破壊の音だ。戦っている音だ。しかし、俺と千代崎さんの間には、何か静寂のようなものが存在している気がした。

「作者を……守る」

 それがキオトのように人間ではなくても。

 あるいは死を知る人間でも。

 世界にとって些末な存在でも。

 作者を守るためなら、作者の生きる世界を守るためなら、誰が犠牲になろうとも構わない。

 滅ぼしたいキオトとは違う感情。

「さあ少年。選択の時だ」

「え?」

「物語と戦わなければ、キオトはこのまま消える。その代わり世界は救われる。キオトが戦って物語に勝てば、キオトは生き残る。その代わり世界の滅びの危険は残る。僕としては、キオトにはここで消えてもらいたい。しかしだ」

「し、しかし?」

「君次第で、キオトも世界も救われる道がある」

「それって?」

「考えるといい。しかし時間はないぞ」

 言われて、俺はキオトを見た。

 キオトには、黒い煙のようなものが揺らめいてまとわりついていた。

 俺はそれを見て、サチのタリスマンに揺らめいていた黒い影を思い出した。

 このままでは、キオトは消える。

 時間はない。

 しかし、選択しなければ。

「キオトを取るか、現実世界を取るか、それとも他の道か。現実世界を生きる、君が決めるのだ」

 千代崎さんが言う。

 現実世界を守るためなら、誰が犠牲になろうとも構わないという千代崎さんが。

 千代崎さんは多分、俺が単純にキオトを取るなら、現実世界を守るために俺を殺すか、キオトを殺すかするつもりだろう。神話生物、この世の厄災である存在を、そのままにするとは思えない。きっと、キオトが消えるように、キオトの生存の可能性――俺によるキオトの救いを阻止するはずだ。そのためには多分、俺のことでも殺すだろう。誰が犠牲になろうとも構わないのだから。

 キオトを取るか。

 俺の命を取るか。

 現実世界を滅ぼすのか。

 現実世界を守るのか。

 俺は……。

 現実世界なんてつまらないと思っていた。

 けれどサチが来て、現実世界には人間の想像力が満ちていると知って、現実世界のことも好きになれた気がした。

 俺は、つまらないと思う以上に、現実世界のことを……どう思っていただろう。

 守るに値する世界であると、思っていただろうか。

 生きるに値する世界だと……思っていただろうか。

 思っていなかったから、俺は望んでいたのではないか。非日常よ、来いと。

 現実世界など見限っていたから。

 それを破るものを望んでいたのではないか。

 俺は。

 自分の狭い視界がとらえている世界を、愛してなどいなかったんだ。

 だったら世界なんて滅んでも。

 キオトが救われても。

 いいんじゃないか。

 ……でも。

 サチが生きて、箒木が生きて、佳那汰さんが、千代崎さんが、キオトが生きて、……生みだした作者たちが生きていて。キオトの作者は人間ではなかったけれど、それを生みだしたのも現実世界を生きる人間で。

 生きて、いるんだ。

 この現実世界には、物語が、その登場人物たちが、生きているんだ。

 世界は守るに値するのか。

 そんなことは分からない。

 本当はくそ食らえな世界かも知れない。

 俺が見てきたように、

 逃避を促すような世界かも知れない。

 でも、それでも、

 サチたちは希望を持って現実世界に来たんだ。


 ――安らかな幸せを望んでいました。


 ……サチ。

 そうだ。

 そういう人が一人でもいるなら。

 その望みが叶うまで。

 この世界を守らなくちゃいけないんだ。

 だから。

「――キオト!」

 俺はキオトの前に回り込んで、その両肩を掴んだ。キオトは既にかなりの部分が影に飲み込まれていて、こうして触れている肩も、もう感触がないかのように思えた。

「キオト! 戦うんだ! 消えちゃいけない!」

 キオトは応えなかった。

「キオト!」

「……羊太郎」

 キオトは、やっとかすかな声を漏らした。

「……ワタシは滅ぼしたかった。だから現実世界に来て、今度こそと思ったのよ……」

「ああ……ああ、そうだな」

 どんどん、キオトの感触が遠くなる。

 このままでは、消える。

「でも世界は……ワタシの望みを叶える気がなかった」

「……キオト」

「望みを叶える気がないなら、どうしてワタシをつくったの。どうしてワタシを生かしたの」

「キオト……俺もそうだったよ」

 キオトは俺を見なかった。

「俺の望みを叶える気がないなら、どうして俺にそんな望みを抱かせたのかって。どうして俺を生んだのかって。どうしてこんな世界に生かしているのかって。どうして、世界と俺はこんなにすれ違っているのかって」

 キオトは、

 ようやく俺を見た。

「俺の望みを叶えるには、現実世界はあまりにも完全にできてる。俺の居場所なんてないみたいだ。それでも俺がここにいるのは、現実世界を生きる他の人達と一緒に、世界を作るためなんだ」

「世界を……作る?」

「確かに人間の死は些末だ。その人生も、どんなに儚いか、自分でははかれないくらい本当に小さい。俺たちは小さいよ。俺たちの絶望も、希望も、望みも叶えたい思いも、世界にとっては小さい。でもその小ささが、この世界に居場所をくれる」

「小ささが……?」

「大きかったら、他の人を押しつぶさないといけない。そうしたら他の人は生きられない。だから俺たちは互いに小さくできてるんだ。大きかったら身動きもできないような狭い世界でも、小さかったらお互いに身を寄せ合って生きられるんだ。お互いに一緒に生きて、この世界を作ってるんだ」

「世界を作ってる……」

「キオト、一緒に生きよう。一緒に世界を作ろう」

「どうして……? ワタシは世界を滅ぼすのに」

「滅び行く世界なら、滅ぶその時まで、キオトなりの世界を作っていこう。キオトが滅ぼすのに相応しい世界にするんだ。キオト、生きよう。一緒に世界の果てになるんだ」

 世界の果てになろう。

 望みが全て叶うような、

 そんな世界の中心に決してなれないなら。

 ここが世界の果てだと叫ぼう。

 俺たちこそが世界の輪郭だと絶叫しよう。

 キオト。

「消えちゃいけない! 一緒に叫ぶんだ!」

 その瞬間だった。

 キオトの香りが渦巻いて、キオトに絡んでいた影が消え去った。

「羊太郎。どいて」

 キオトはしっかりした顔をして、俺を見た。目が合うと、キオトはにっこりと笑って、両手で頬を覆った。

「ワタシは消えない。現実世界を、ワタシが滅ぼすのに相応しい世界にするわ」

「キオト……!」

「さあどいて。巻き込まれたくなかったら、ね?」

 そう言った瞬間、キオトの髪が花咲いた。花咲いた髪が伸びて、空間を覆うように縦横無尽に張り巡らされる。俺は慌ててそれをよけて、キオトの後ろに逃げた。気付けば、近くに千代崎さんがいた。

「……千代崎さん」

 千代崎さんは小さく咳をして、にやっと笑った。

 キオトの髪が張り巡らされたのを見た少年少女たちは、恐怖したような顔をして、いっせいにキオトに銃口を向けた。しかしその瞬間、少年少女たちの顔が裂けて、中から大輪の花が咲いた。

 キオトの足下から、草原が広がる。草原が広がると、そこから生えそろった草花が光のような霧を放った。それに触れた廃ビル群も、少年少女たちの銃も、木の質感になり、樹木に変わり若葉が生え、無機物ではないものに姿を変えた。

 広がっていく草原は張り巡らされたキオトの髪と絡み合って、空間を満たした。

 香りがする。蠱惑的な香り。キオトの香りだ。

 キオトは頬を上気させた。

「ワタシは神話生物。この世の厄災、クルウルウ。人間なんて、なんて小さいの!」

 その声が響き渡った瞬間だった。全ての少年少女たちの体が裂け、中から草花や樹木が生えた。飛び散った血も空中で花びらに変わり、美しく舞い上がる。

 少年少女たちが全て花や樹木になると、空間が歪んだ。それに従ってキオトの髪も元の長さへと縮みはじめ、世界の歪みを巻き込みながら、あるべき姿へ戻っていった。

 後に残ったのは、先程までの司書室。

 こうこうとディスプレイの光るパソコン。そこには『untitled_1』と書かれたウィンドウ。俺には意味の分からない記号の羅列。

 箒木はほっとしたような顔をして体に光を走らせ、機械の翼や武器をしまった。

 ナリミヤキオトは、理解不能に陥ったような顔をして俺たちを見ている。それはそうだろう。突然現れた非日常。それに巻き込まれて、どうして平静を保っていられるだろう。

 佳那汰さんはそのナリミヤキオトに近付いていって、その前にしゃがみ込んだ。

「なっ、なんだよ、なんなんだよ!」

「落ち着いて。すぐ忘れるわ」

 と言うと、佳那汰さんはナリミヤキオトの額を中指で突いた。するとナリミヤキオトはふっと目を閉じて気を失い、佳那汰さんに寄りかかった。佳那汰さんはそれを支えて抱え上げると、司書室の椅子にナリミヤキオトを座らせた。ナリミヤキオトは机に突っ伏し、眠っているようだった。

「佳那汰さん、何をしたんだ?」

「記憶を消してあげたわ。日常に戻れるようにね」

 佳那汰さんはこともなげに言って、ふっと笑って俺を見た。

「良くやったわ。羊太郎」

「いや、俺は……」

 何かしたという意識がなかったので、俺は不当な評価を受けた気がして、思わず後頭部を掻いていた。

「羊太郎。怪我はありませんか」

「皆戸くん……!」

 サチと箒木が俺の顔を覗き込む。

「大丈夫だよ。それより……」

 キオトは?

 見ると、キオトは恍惚とした笑みを浮かべながら頬を赤く染めて、両手で頬を覆っていた。

「うふふっ! 世界を作るの! 壊すのに相応しい世界をね!」

「キオト……」

 俺はほっとして、キオトに向けて微笑みかけた。

 キオトは、いっそう頬を上気させて、嬉しそうに、笑った。



「……おはよう、皆戸くん、篠目さん」

「おう。おはよう」

「おはようございます」

 俺たちは校門でそれぞれ挨拶して、お互いに微笑みあった。サチはもちろん、無表情だったけど。

 上野の街はすっかり日常に戻っていた。昨日上野の街が植物に変わり、霧に包まれていたことなど、この世界から消え去ってしまったかのようだ。ニュースでは、上野が一時的に濃霧に包まれたとだけ言っていた。この情報操作は、佳那汰さんがやったのだろうか。

 登校してきている生徒たちの中にも、濃霧だったことだけは記憶にあるようで、「昨日の霧見たかよ!」「すごかったよな!」などと、会話しているのが聞こえてくる。しかしその証拠である写真などは誰も持っていないらしく、会話だけで終わっている。

 俺たち三人はそんな日常を取り戻した学校の中に入り、教室に向かった。

 教室に入ると、そこには、クラスメイトたちに囲まれたキオトがいた。キオトはクラスメイトたちと何か話しているようだった。

「なあなあ、キオトちゃんて、何か好きなこととかあるの?」

「あっちの国ではさ、どんな教科が得意だった?」

「ちょっと! あたしたちが先に話してたのに!」

「割り込んでこないでよね男子!」

 転校生たるキオトを囲んで、言い争いが始まる。キオトはそれを見て頬を上気させて、両手で頬を覆った。

「うふふ! とっても楽しい! 喧嘩も素敵ね! でも、ね、仲良くしましょう?」

 そのキオトの笑顔を見て、クラスメイトたちは魅入られたようにキオトを見つめ、顔を赤くした。本当に魅了されているんだ。キオトには多分、そういう力もあるんだろう。

「おはよう、キオト」

 俺が声をかけると、キオトはぱっとこちらを向いて、踊るように駆け寄ってきた。

「おはよう、羊太郎! うふふ!」

「おはようございます」

「おはよう、クルウルウさん」

「ええ、おはよう!」

 キオトはサチと箒木にも挨拶を返すと、くるりと一回回って見せた。

「とっても楽しい! 最高の気分よ!」

「へえ? なんで?」

「だって! こんなに人間が沢山! 裏切って裏切って、殺して殺して殺し尽くして、滅ぼして! そういうことがとっても楽しみ!」

「へ……へえ」

 キオトの相変わらずの性質にちょっと引いていると、キオトはころころっと笑った。

「ワタシが壊すのに相応しい世界にするの!」

「へえ、それって、どんな世界なんだ?」

 キオトはクスッと笑うと、もうたまらないというように頬を赤くして、両手で頬を覆った。

「幸福であふれた世界! それが壊れたときの絶望がどんなに大きいか、考えただけでワタシが壊れそう! 幸福で満ちあふれるまで、ワタシはみんなと、仲良くするわ! うふふ!」

「……そっか」

 幸福で満ちあふれた世界。

 それは一体どんな世界だろう。

 キオトには作り上げられるだろうか。

 自分が満足するような、一点の曇りもない美しい世界を。

 いや……キオトは、神話生物。この世の厄災、クルウルウ。

 人間には考えつかない方法で、きっと。

 空は良く晴れていた。これからの俺たちの日常を、祝福してくれているかのように。

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異世界出身の彼女の事情2 兎丸エコウ @tademaru_echow

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