第38話 戦利品

 リクトは気絶したままの戦利品を抱えて屋敷に戻る。それから数時間後、ようやく人狼が目を覚ました。


「よう、ようやくお目覚めか?」

《……はっ!? あっやっ……くぅぅぅぅぅんっ!》


 リクトは目覚めと同時に何発目かもわからなくなった塊をプレゼントしてやった。


《お、おおおお前っ! いつからだっ!?》

「あ? 昼からずっとだけど?」

《ひ、昼から……ずっと……? そ、そんな……! うっ……。酷い……あんまりだっ! 初めては旦那さまになる人とって決めていたのにっ!》


 リクトは腰を止めずに人狼に言った。


「あん? なら俺のモンになりゃ良いじゃねぇか」

《な、な……に? い、良い……のか? 我らは敵同士……》

「はははははっ! バカか。最初から敵とも思ってねぇよ。俺の敵は……あいつだ。魔神グレマンティス。それ以外は眼中ねぇよ」


 それを聞き人狼は起こしかけていた身体をベッドに倒した。そしてリクトにされるがまま受け入れていた。


《最初から……相手にもされてなかったのか……。ははっ、くやしいなぁ……っ》

「戦いに関しちゃあな。だが……この戦いは別だな」

《なに?》

「良い身体してんじゃねぇか。俺ら相性バッチリだと思わないか? ほら」

《うぅぅぅっ》


 リクトと人狼の間には隙間など一つもなかった。お互いにしっかりと絡み合い、お互いを刺激しあっている。


「魔族も捨てたもんじゃないな。なぁ、生き残りはお前らで最後か?」

《……いや、戦力にならない奴らは魔界にいる。それと四天王は神界を抑えている》

「へぇ~……」

《……こら、今知りもしないメスの事を考えただろう!》

「うぉっ!?」


 いきなり締め付けがキツくなった。


《す、するならちゃんと私を見ろ……。そしたら好きなだけ抱かせてやるっ……》

「良いのかよ? 敵同士なんだろ?」

《そんなの……今さらだ……。私は負けたんだ。敗者は強者に従う。それが魔族の掟だからな。敗者は何をされても拒めないのだ》

「そうか、ならこのまま孕ませるぜ?」

《ふんっ、私は人狼だからな。多産種だぞ? ちゃんと面倒見られるんだろうな?》

「余裕だっつーの。おらっ、ある卵全部出せや。漏れなく受精させてやっからよっ!」


 行為は朝方まで続き、人狼はリクト側に堕ちた。これで残すは後六人だ。


 それから六日間かけリクトは野郎共を一人ずつ順調に消し飛ばした。この間にミランダリアも孕み、今はもっぱら魔狼のチビッ子二人がリクトの相手になっていた。


「いやぁ、楽勝過ぎたな。リーダーなんて【グランドクロス】で消滅しちまったしなぁ~」

《ステージも消えてました!》

《リクト様は強いですっ! 僕も女の子になってしまいましたし……》

「あるべき姿にしてやったまでよ 。さて……」


 リクトは窓から空を見上げる。


「あれ以来魔神を見ちゃいないんだが……。奴はいったい何をしているのやら。配下はこの通り、もう俺のモンになっちまってるしよ」

《私たちも何をしているかまでは……》

《知りたいかね、田中 陸人》

「ああ、やっときたか」


 魔狼二人を除く二人が魔神に平伏す。魔狼二人はリクトを両側から挟むのに夢中で頭を下げなかった。


《おやおや、我が子らを……。やはりあなたは良い……。あなたは相手が誰だろうと差別はしないようだな》

「そりゃあな。だが差別はしないが区別はする。俺の仲間か、仲間じゃないかだ」

《なるほど。田中 陸人、その者らは仲間となり得たか?》

「ああ、仲間だ。……で、グレマンティス。そんな事をわざわざ確認しに来たわけじゃないだろう? 今まで何をやっていた」


 魔神はクスリと笑った。


《何を……ですか。強いて言えば……仲間を増やしていた……だろうか》

「なに?」

《人間の中にも優秀な奴はいるものだ。我はそやつらを捕らえ、魔人に作り替えていたのだよ》


 そう口にした次の瞬間、魔神の影の中から次々と影が飛び出して来た。


「……それが魔人か」

《そうだ。田中 陸人、取引をしようか》

「取引だ?」

《ああ。我はお前の住む地に手は出さん。お前の地以外を我の支配下におく。暗く、陽の当たらない冷たい魔界から我が子らをこの地上に出してやりたいのだ》


 リクトは黙ったまま魔神の話を聞く。


《今回の件で我が子らは更に数が減ってしまった……。そのほとんどがお前に殺られたのだがな》

「仕方ないだろ、襲ってきたんだし」

《ああ、仕方ない。弱いから負ける。だがなぁ……それても子は子だ。田中 陸人よ、地上にいる人間はお前の地の人間だけだ。残りは男は全て殺し、女は見ての通り魔人に変えた。これをお前にやる。だからこの地上を我が子らに与えてやってくれ……頼む》


 魔神は力ではなく口で挑んできた。


「……お前は何をする気だ」

《我は神界の完全支配がまだなのでな。そちらに向かわなければならぬ。いずれ堕天使もこちらに送ろう。ああ、そうだ……魔人や堕天使の作り方を教えてやろう。作り方は簡単だ、数回にわけて我の血を数敵飲ませるだけ。それで完成する。抱いてはいないゆえ、新品そのものだ。天使は良いらしいぞ、田中 陸人》

「よしっ! 手を組もうじゃないか!」


 リクトは魔神に屈した。殺るのはいつでも出来る。だが殺ったからと言って解決する話でもない。魔族の暮らしにも同情はする。人間も少なくなったし、こちらに実害がなければ住まわせるのは構わない。


《さすが我が認めた男だ。お前ならわかってくれると信じていたぞ、田中 陸人よ》

「争いは悲しみしか生まないからな、平和的解決といこうじゃないか、グレマンティス。俺らも今後魔族を殺さない。だが、罪を犯した魔族は裁かせてもらう。これが条件だ」

《うむ。呑もう。地上の魔族と魔人はお前の支配下におく。どこか広い場所に街を作っておいてくれ。そこを世界の中心とし、地上を魔の楽園にしてほしいのだ》

「……はいはい。いつ来るんだ?」

《半年後だ。半年後、全ての魔人と魔界にいる魔族をお前に預けにくる。こいつらは手付けだ。あまり遊び過ぎて街が出来なかったと言わないでくれよ?》


 そう言い、魔神は元人間である裸の魔人十人をその場に残し消えた。


「リクト様、今よりリクト様が我らの主! どうかリクト様の御寵愛を賜りたく……」

「あん? ま、仕方ないか。それじゃ俺の領地……じゃ不味いな。魔族らが入ったら消えちまうか。なら新しい土地を探すか。誰か良い場所知ってるか?」


 そこで一人の魔人が手を挙げた。


「はっ! 場所は世界一の大国があった【ブレード大陸】が宜しいかと! あそこは一年を通して気候も安定しており、緑も豊かな地であります」

「……ふむ。お前、ちょっとこっち来い」

「? は、はい……」


 魔人はびくびくしながらリクトに近付く。何か不快にさせてしまったかと思っていると、気がついたら抱かれ、リクトが魔人の中でびくんびくんっと暴れていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「素晴らしい意見だった。役に立つじゃないか。俺は世界の事はあまり知らないからな。ああいった意見はすごくありがたい。これは礼だ、魔人で初めての妊婦にしてやろう。受けるか?」

「あぁぁぁぁっ……! 私が魔人で最初の……っ! も、もちろん受けますともっ! あぁ……リクト様の……すごぉぉぉぉぉっ!」


「「「う、羨ましいっ……!」」」


 残りの魔人らは羨ましそうに仲間の情事を見るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る