第32話 スラム地区
リクトは急ぎスラム地区へと向かった。
「いくら怠惰な俺でも犯罪は許せんっ! 俺の領地で生きていけると思うなよっ、犯罪者どもっ!!」
そして現在。
「またいらして下さいね~」
「……うん。最高かよ」
リクトはスラムでスッキリしていた。
「うへへ……可愛かったなぁ~……。……はっ!? 俺はいったい何をっ!? いかんいかん! スラムの調査をしなければっ!」
「お兄さ~ん、もうスッキリしちゃいました? まだならウチでどうです?」
「……」
そして夜明け。
「「「スヤスヤ……」」」
「……うへへ。まさか三人もいたなんて……ってそうじゃない!? 俺はいったい何しに来たんだっ!?」
「あら? お客さんいたのね? 邪魔しちゃってごめんなさいね?」
「……ごくり」
太陽が真上に昇っていた。
「お客さんっ……! 私は世話役でこういう事はっ……!」
「止めようか?」
「いやっ、止めないでぇぇぇっ!」
「オーケー。なら最後までじっくりとな?」
「……はいっ」
そしてまた夜になる。
「……スラム……。なんて恐ろしい場所なんだ……。何の調査しない内に二日も経ってしまったぞ!?」
わかった事と言えば可愛い女の子が多い事くらいだ。リクトは金にモノを言わせてスラムを楽しんでいた。
「お兄さん、仲間連れて来たよ~」
「「「「よろしくお願いしま~す」」」」
「……うん、最高かよ」
リクトが金持ちだと知ると仲間が仲間を呼び、最初に立ち寄ったボロ屋はリクトの天国となってしまっていた。早々に調査を終え帰ろうとしたリクトだが、既にスラムで一週間も暮らしていた。
「じゃあ君らは犯罪者グループの資金源にされて?」
「……はい。嫌だけど逆らうと殺されちゃうから仕方なく……」
「……そうか。ますます許してはおけないな。その犯罪者グループのアジトは?」
「え? あの……まさか……」
リクトは女の子に言った。
「犯罪者グループは俺がぶっ潰してやろう。そしたら君らは自由だ。で、俺は君たちを気に入ってる。もし自由になったら俺が新しく作る町で暮らさないか?」
「ま、町を……つくる? お兄さん……何者?」
「俺はリクト・マイスター。この領地の領主だ」
「り、領主……様!? な、なんで領主様がスラムなんかに……!」
「そりゃスラムなんてぶっ潰すためさ。怪我をしてる奴等は治療するし、年寄りは知識の語り手として雇う。女は身体を売らなくても生きていけるようにする。弱者を食い物にしている犯罪者は決して許さない。それが俺の考えだ。さあ、スラムを出よう! これから待っているのは輝かしい未来だっ!」
「は、ははぁっ!」
リクトは誘惑を絶ち犯罪者グループのアジトの前に立った。
「あぁん? なんだお前は? ここはガキの来る所じゃねぇ。それとも何か? 俺らの仲間に入りてぇってか?」
「【ストーンフォール】」
「は? あぁぁぁっ!? あ、アジトがっ!?」
リクトは容赦なくアジトに巨大な岩を落とした。建物は中にいる犯罪者ごと大岩の下敷きとなっていた。
「アニキ! アニキィィィィッ!! て、テメェッ! なんて事をっ!」
「お前で最後だ。俺の領地に犯罪者は不要。来世に期待してくれ。【フレイムランス】」
「ぎあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
最後の犯罪者は炎の槍に貫かれ燃え上がった。その最後の断末魔を聞きつけスラムの住人が何事かと集まり始める。
「なんだぁ……? あれっ!? 奴らのアジトが瓦礫の山に!?」
「えっ!? あいつら……死んだの!?」
轟音と断末魔がスラムの住人たちを集める。
「そうだっ! ここを仕切っていた犯罪者は俺が退治したっ! お前たちはもう自由だっ!」
「あ、あんたはいったい……な、何者だ? 」
「俺はマイスター領領主、リクト・マイスター! お前たちを救いに来たっ! 傷を負った者は癒す! 仕事が欲しい者には老若男女だれだろうと仕事を与えるっ! 集え、救いを求める者たちよ! この俺が救いを与えようではないかっ!」
「「「「お……おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
スラムが沸き上がった。
「い、戦で片足を失っちまったんだ!」
「【エクストラヒール】!」
「あ、足が生えた!?」
「わ、ワシは昔鍛冶士で……」
「大歓迎だ! 工房を与えるから弟子を集え!」
「わ、私は身体しか……」
「更に大歓迎だ! 毎晩抱きにいってやるから店を開け!」
「こ、子供は?」
「養ってやる! 子供は子供らしく学び遊び健やかに暮らせ!」
「「「「か、神だ……! リクト様バンザァァァァイ!!」」」」
スラムの住人は地に座り頭を下げリクトを崇めた。
「一ヶ月、一ヶ月だけ時間をくれ。その間に領内全てのスラムで暮らす者たちが暮らせる場所を作り上げるっ! 出来たら必ず呼びにくるっ! それまで何とか生きてくれっ!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」
それからリクトは城のある町に近い森を切り開き新しい町作りを開始した。この森は元リンカネット帝国に程近い場所にある森だ。この場所を選んだ理由は後でわかるだろう。
それから一ヶ月後、リクトの町が完成した。
「よし、完成だ。下水道を完備した最新式の町の完成よっ! 農地に学校、孤児たちが住む寮、ようやくここまできた」
「お兄さ~ん、できた?」
「ん? ああ、やっと完成したよ」
「すごいすご~い! 三日でできたの~?」
一ヶ月のほとんどをスラムから連れてきた少女に費やしていたのは秘密だ。
「本気を出したらこんなもんよ。さあ、皆を迎えよう。新しい生活の始まりだっ!」
こうして、新しい町を完成させたリクトはスラムから住人を移動させるのであった。
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