第23話 バロン王国の女たち
町に出ようとしたら何故か国王に引き留められ、リクトは今要人用の客間で姫たちに囲まれていた。
「リクト様っ! ぜひとも私と子作りを!」
「いえいえリクト様っ! 私としましょう!」
「だめだよ~! リクト様は私とするんだから。ね~リクト様?」
どうしてこうなった。
リクトは困り果てていた。何故困っているのか。理由は明白だ。おそらく国王はリクトをどうにかして自国に留めておきたい。そのために娘たちをあてがい逃げ道を封じてきたのである。そんな事は百も承知だ。
そして半日後……。
「ふぁっ……、リクトさまのぉっ……しゅごかったぁ~……」
「まさか全員とだなんてぇっ……逞しすぎますぅ……っ」
「リクトさまぁ……、もう一回~……!」
「イケメンに抱いてもらえると聞いて!」
「めっちゃ上手い人がいると聞いて!」
「あの……、ちっちゃい子でも大丈夫ですか?」
リクトは来る者を全部平らげてしまった。
「我慢しろって言う方が無理だぜ……。なんて策士なんだ……バロン王っ!」
そう呟いた時ふと扉の方から視線を感じた。振り返ると扉の隙間からバロン王が覗いていた。
「ふはははははぁっ! やりおったな? しかと見たぞっ! まさか全員抱くとはなぁ……? その者らは王族ぞ? 勿論責任は果たしてくれるのだろうなぁ?」
「くそぉっ……! なんて卑劣なっ! 俺の弱点につけこんでくるなどとぉぉぉっ!」
「ふふふっ、一目見てわかったわい。お主はワシの若い頃にそっくりじゃ……。女に求められては断れぬのじゃろう? はぁっはっはっは!」
リクトは完全に屈していた。
「くっ……、何が……望み……あ、君もう一回いい? 」
「はぁ~い!」
「親の前でも遠慮なくやるか……。お主……まさか逃げるつもりではないだろうな?」
リクトは末っ子を抱えながらバロン王に言った。
「逃げる? ははははっ、誰が逃げるかっ! こうなったら責任でもなんでも果たしてやるわっ! リンカネット帝国を倒しバロン王国をもり立ててやるよっ!」
「くくくっ、確かに聞いたぞ? ならワシからはもう何も言う事はない。今日からワシの事はお義父さんと呼ぶのじゃ。のう、リクト?」
「あ、その前にギュネイ王国にもう妻と子が……」
バロン王は言った。
「はっはっは! 呼べ呼べい! 全員呼んでやると良い。ギュネイ王国では一般人だったのじゃろう? ワシの娘達を娶るのだ、リクトには我が国の公爵位を与える。娘達と繋がったように我が国ともズッポリ繋がってくれいっ!」
「……まだ続ける?」
「……いや、これくらいにしておこう。このノリは疲れるな」
「ノリノリだったじゃん……」
リクトは末っ子を逝かせベッドに降ろした。
「こんな真似しなくてもさ、ちゃんと助けるつもりだったんだぜ?」
「わかっておる。じゃがな、親とは欲張りなのじゃよ。娘に最高の旦那を見つけてやりたいという親心からなのじゃ。見よ、娘達を。皆すっかりお主に惚れてしまっておる。リクトよ、我が国を頼むっ……!」
「ああ、任せてくれ。これ以上リンカネット帝国の好きにはさせないからさ」
「すまぬな……。では……次の侵攻が始まるまで励んでくれ。邪魔したな」
そう言い国王は部屋を出ていった。リクトはそれを見送りつつ、先端に入口を感じたので腰を突き出した。
「あっ!」
「ん? こんな感じの奴いたっ……だれ?」
「あ、私王妃ですの。娘に誘われまして……ほほほ」
王妃って。それはさすがに不味いのでは……。
「側室48参上っ! さあ、リクト様! 次は私達の番ですわっ! 勃たない王の代わりに私達に愛をっ!」
「多過ぎるわっ!? あ、ちょっ……やめっ!? あっ……」
リクトは突然室内に乱入してきた側室たちにたっぷりと搾り取られる事になった。
「王よ、なにも王妃や側室までやらずとも……。彼には若い方が良いのでは?」
「いや、ワシはもう不能じゃからな……。妻らにも楽しみを与えてやらねばとな。それに……今回の戦でかなりの民を失ってしまった。すぐにでも補てんせねば国が滅んでしまう。今この国に必要なのは若い力じゃ。リクトは相手をしっかり愛して抱く意外と律儀な男と見た。あれになら妻をくれてやっても構わぬ。さあ、我らは国境の監視じゃ。散々苦渋をなめさせられたのじゃ。ここから反撃をするっ!」
「……はっ!」
バロン兵がリンカネット帝国兵の侵攻を監視している間に、リクトは王妃と側室を休みなく堪能していた。
「はぁっ……、こんな若い子に抱いてもらえるなんて……。こんな濃いの久しぶりよぉ……」
「ねぇ、今さらだけど……。私達全員三十前後なのだけれど……。あなたは抱いて後悔してないのかしら?」
リクトは室内にいる全員に向かってこう言った。
「歳なんて関係ないさ。要は抱いて気持ち良いか気持ち良くないかだ」
「私達は気持ち良かった?」
「さぁて……よくわからなかったからもう一回ずつ抱こうかなぁ? 今度はわかるまで抱くからな?」
「わかる……までね? もうっ……」
大国と戦うためには肩書きが必要だ。別にギュネイ王国でも構わなかったが、あそこの王は争いを嫌っていた。なのでリクトはこの企みを受け入れたのである。決して欲からなどではない。そもそも彼は何度も言うように与えられる者を好まない。
この一件もリクトにとっては勇者を排除するための足掛かりでしかない。もしも勇者を排除した後も利用してくるようなら残念だがバロン王国は滅ぶ事になるだろう。それだけの力をリクトは持っている。リクトはまさに諸刃の剣なのだ。
リクトは誘惑に負けたフリをしつつ、勇者との戦いの日まで英気を養うのであった。
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