第7話 騎士団到着
事件から十日後、村に国の騎士団が到着した。騎士団は村長に挨拶し、村に詰所の建設を初めていた。
「あ、あれが騎士団? マジ?」
リクトは騎士団の様子を眺めていた。と言うのも、治安を守る騎士団が弱くては話にならないと考え、心配になってしまったからだ。案の定、国から派遣されてきた騎士団は見習い騎士、それも女ばかり五人のみだった。
「隊長~、この資材どこのですか~?」
「へ? あ、それ基礎の部分じゃないの!? あぁっもうっ! 一からやり直しよっ!」
「「「「えぇぇぇぇっ!?」」」」
俺は項垂れた。詰所もまともに建てられないのかと。
「隊長、私達見限られたんですかね?」
「なぜ?」
「だって……こんな辺境の村の警備だなんて……」
隊長は仲間の騎士に言った。
「そんな事はないよ。国は全ての民を守る義務があるんだから。例え辺境だろうと民は民。命の重さに違いなんてないの」
「……隊長、私達まだ入団したばかりじゃないですか。訓練だって一ヶ月ちょいしか受けてないし。隊長もでしょ?」
「うっ……。も、文句を言わずに働くのっ! 結果を出せば国も認めるはずよっ!」
「「「「……はぁ~い」」」」
俺は派遣されてきた騎士団を見てこう思った。
「……うん、全く期待できないな」
「うん? 君はそこで何をしている?」
「へ?」
隊長とやらに見つかった。
「あ、いや、その……。騎士なんて初めて見るからついどんな人達かな~って。あ、もう行くのでお構い無く……」
「待て!」
「な、何ですか?」
隊長は俺の肩を掴み真っ直ぐ見てきた。
「君……私を鑑定したな?」
「は、はい? いやいや、してませんよ?」
「嘘だな。私のスキル【真贋】は相手の嘘を見抜くスキルよ。君、名前は?」
「り、リクトです」
「ふむ。ではリクトくん。黙って女性を鑑定するなど無作法ではないかな?」
「は、はぁ……」
「今回だけは許してあげる。だけど……ただではないよ?」
「ま、まさか……」
隊長はニッコリと笑みを浮かべ仲間の下へと引きずっていく。
「よし、休憩! 噂のリクトを確保した!」
「「「「さすが隊長!」」」」
「へ? う、噂?」
隊長は俺にこう言った。
「村に風呂を作ったのも君なんだって? 村長から詳しく聞いているよ」
「あ、あの村長っ! ……ま、まさか……」
「うん、さっきの鑑定は見逃してあげるから……詰所つくるの手伝ってくれるかな? リクトくん?」
「ちょっ、何でだよ!? これも騎士の仕事……」
そう反論しようと作りかけの詰所を指差したその時、詰所はガラガラと音をたて崩れ落ちた。
「は、はぁ?」
「わかったでしょ? 私達は全員まだ素人なのよ……。詰所がなければ仕事もできないの。君は乙女の秘密を覗き見たのよ? だから……手伝ってね?」
「お、横暴すぎる!? 確かに見たけど……! それはあなた達の強さを知りたかっただけで……!」
「「「「あなた……達? ははぁ~ん?」」」」
「へ?」
騎士たちが一斉に俺を取り囲んだ。
「どこまで見たのかしら?」
「へ?」
「まさか……そこまで全部覗いてなんてないわよね~?」
「い、いや……」
「さあ、言え! 私達は全員乙女だからな!」
「いや、あんたは経験者だ……あ」
「やはりか! 全部見たんだな! 子供だからと容赦はせんぞっ!」
「え? な、んなぁっ!?」
騎士は手袋を脱ぎ捨ていきなり俺のズボンの中に手を突っ込んできた。
「ははははっ! 子供だからと! 子供だから……子供? は、はぁっ!? ちょっ……んんっ! ほうほう……ふむふむ……これはこれは……」
「ちょ、待って! 手伝う! 手伝うから!」
「隊長! リクトは何かを隠しております! 調査の許可を!」
「うん、いってらっしゃい」
「はっ! こい、リクト。調べさせてもらうっ!」
「な、なんだそりゃぁぁぁぁっ!?」
それから一時間物陰でたっぷり隅から隅まで調べつくされた。
「隊長、リクトの調査終わりました」
「どうだったの?」
「はっ! リクトは魔導師であり……」
何故か全てバレていた。
「そう、ご苦労様。さすがあなたのスキル【濃厚接触】は万能ね」
「ええ、使うためには身体を重ねなければなりませんが……今回は役得でした」
「後はゆっくり休んでちょうだい」
「はっ!」
隊長が改めて俺に言った。
「あなたの秘密は全て握らせてもらったわ。強さから全てね?」
「……ど、どうする気だよ」
「別に何もしないわよ。私達に協力してくれるならね? でも……協力してくれないなら……うっかり口が滑って国王様にあなたの事報告しちゃうかもしれないわ」
「き、脅迫する気か! な、なんて汚い真似を……! それでも騎士の端くれかっ!」
「やぁねぇ~。私達は善意からの協力が欲しいだけよ。これから長~い付き合いになるかもしれないし……、お互い仲良くしましょうね? リクトくん?」
国家権力はいつも横暴だ。まさに嵌められた。ハメたのは俺だが……。
「くそぅ……。覚えておけよっ!」
それから俺は魔法と余っていた資材を使い詰所を作ってやった。すると奴らは詰所に風呂やら家具やらを次々と要求してきた。もうぶっ飛ばしてやろうかなと思ったが、それをした時点で俺はお尋ね者になってしまう。……泣きたい。
「いやぁ~優秀優秀! お陰で快適な詰所が完成したよ。ありがとう、リクト?」
「……これだけ働いたんだ。もう俺には関わらないと約束しろっ!」
「え~? それは無理よ」
「な、何でだよっ!?」
隊長は真面目な顔で俺にこう言ってきた。
「リクトは私達より強いじゃない?」
「……だから?」
「ふふん、リクト! あなたを私の騎士団の臨時団員にしてあげるわっ!」
「ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁっ! 絶対に嫌だっ!」
「あら~? 良いのかしら~? 私の口が滑りそうだわ~。それだけ強いと王都に召還されちゃうかも~?」
「な、なななななんて汚いっ!?」
俺の怠惰な生活に暗雲が立ち込めてきた。
「協力……してね?」
「どちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
こうして俺は秘密を握られ、翌日からこの騎士団臨時団員として無理矢理働かされる事になるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます