記事 2


 Φ


 昨年、十月ごろから世間を騒がせている事件の続報が入った。

 ××区××3丁目にある『ホテルクラウン』で、正午過ぎに男性のものとみられる変死体が発見された。

 清掃のため室内に入った清掃員が男性と見られる遺体を発見。その後、知らせを受けたホテル従業員らによって××区警察所に通報が入った。

 これにより都内ホテルで発生した変死事件は六件目を数えることとなった。

 警察からの正式な発表はないが、被害者となった男性らは全身に文字を刻まれた状態で発見されていることが、目撃者らによって判明している。おそらく、鋭利な刃物を用いて身体に直接、文字を刻み込んだのではないかと考えられている。

 これまでに遺体で発見された男性らの身元は公開されていないが、被害者に共通していることとして、当時交際していた女性はいなかったことがわかっている。被害者らの身元が公開されていない理由としては、援助交際目的で出会った女性とホテルを利用した可能性が考えられており、いずれにしろ一部の捜査内容に箝口令が敷かれているようである。

 なお、直接的な死因は絞殺であることが警察の報道発表でわかっていることだ。

 犯行は都内のホテルで行われたこと。被害者は皆、男性であること。全身には判読できる文字が無数に刻まれていたことなどから、これまでに起きている事件と同種のものであると考えて間違いなさそうだ。

 これらの事件はいずれも〝ラブホテル〟の部類に入る宿泊施設で発生しており、通常の宿泊施設と違い受付で顔を合わせることなく鍵を受け取る場合がほとんどである。そのため、ホテル関係者から容疑者と考えられる者の目撃情報が得られていない。また、事件当時の宿泊客らの身元もはっきりしないことから、聞き込み捜査による有力な証言も取られていないようである。

 警視庁による注意喚起が行われているにもかかわらず凶行が治まることはない。施設を利用する人々の間では警察に対する不信感と、その残忍な犯行に不安を表す声が多く挙がっている。

 また、一連の事件は昨今話題に上っている小説家、字臥恭个の『絶禍凛』の作中に描かれている〝禍文字(まがもじ)〟という作中人物による殺人事件に酷似していると言われている。

 このことから、作者の狂信的なファンによる模倣犯ではないかという見解がネット、SNS上で騒がれているが、これら六件の連続殺人事件が『絶禍凛』の模倣である根拠を警察は公表していない。

 残忍な犯行による殺人事件の捜査は難航し、未だに解決の目途はたっていない状況である。都内宿泊施設を利用する際は厳重な警戒が必要であるだろう。

 警察の捜査状況等、引き続き事件の続報を待ちたい。

            〈『ネットニュース365w』 20XX/2/1X 更新分より一部抜粋〉


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