第十三話 勇者たちとの会合

私はのっそのっそと東を目指していた。

認識阻害のローブもしているし、見た目も結構変えている。

例えば黒髪はここでは目立つので栗色の染粉を用意してもらった。

奴隷紋も隠せるようにおしろいもくれた。

メラさんは本当にいろいろ用意してくれていたみたいだ。


まだ王都の城下街だ。急いでいったり目立つ行動は避け、なるべく自然に冒険者を装って普通に歩いている。

いまはローブをすっぽりかぶってるから特に珍しい目でみられたりしていない。問題は街の外門の門番かな?やといの平民兵士だけしかいないはずだから、無理しなきゃ平気なはずだけど、ステータスプレート登録してない放浪者の私が、それを求められたらアウトだ。

ダメだったら全速でにげる?ううん私は同じ年の子と比べてもはるかに足が遅い。

うーん商人の馬車とかに隠れていく?最悪そうしよう。


そうだ!ガンツさんからもらった袋に、メラさんに困ったら見ろっていわれてたから何が入ってるか確認しておこう。


【革袋(マジックボックス)】

調合器具

調理器具

下着×5

ナプキン×10

フリルの洋服×2

ミスリル短剣

中銀貨×5枚

干し肉×10枚

中ポーション×5本

偽装の鱗粉×10

おしろい×10

リンゴ×100

ギルドカード


すごい!こんなに入ってる!お金も……それに下着やナプキンまで。

というかナプキンってあったのか。あとガンツさんリンゴ入れすぎでしょぉおお!


そして今欲しいと思ってた私の身分証明書!ギルドカードだ!

ちょっと出してみてみよう。


【ギルドカード】

===========

名前 : ニア

レベル : 3

クラス : 人間

年齢 : 13

性別 : 女

状態 : 【良好】

職業 : 採取者

称号:冒険者ランクF

HP : 20 / 20

SP : 13 / 13

力 : 5

体力 : 5

器用 : 10

速さ : 1

知性 : 10

運 : 1

スキル : 【鑑定】【調合】【調理】【生活魔法】

===========


うん。いいねいいね!初めて普通のステータスになれた気がする!

鑑定されたら一発でバレそうだけど。ニア?うん知らない名前だけど、偽造カードなのだからそうなるよね。呼ばれたときに間違えないようにしないと。


私はやっと身分証を手に入れてうれしくってちょっと浮かれていた。

首から下げられるので、ちゃんと胸元にしまっておこう。

私はちょっとルンルン気分でふわふわと歩いていた。

だから完全に油断していた。


のっそのっそ……


のっそのっそ……


のっそのっそ……


あれ?……っげ!!あそこにいるのは王立勇騎士団の制服の……。

元クラスメイト達じゃない?

確か騎士団がさがしてるって、勇者がってことだったの?



うわーすごい伏線だったぁ……。



でも今は私はローブのフードで顔も隠してる。認識阻害もあるし髪も染めている。きっと大丈夫。

何か話しかけたら無視しよう……そうしよう……。


のっそのっそ……


のっそのっそ……

対面からその集団が歩いてくる……。


ドキドキ……。


飛鳥井くんを先頭に両脇には城島さんと三菱さんカーストトップ3だ。

それに後ろには【水澤 絵里(みずさわ りえ)】って普通の子だ。

私よりは存在感あったはずだけれど、あの3人の中じゃ空気だろうね。

あれだ……勇者ハーレムだね、あれ。

ちょっとドキドキしながらすれ違う……。


のっそのっそ……

のっそのっそ……

トコトコトコ……

トコトコトコ……ザッ!


私がそのグループを通り越したあと、グループの一人が止まってこちらに振り向いた。


「そこのローブの方!ちょっと話を聞きたいんだけどいいかい?」


(コクリ)


しゃべるともう話し方でばれっばれなので、頷くことだけにした。


「人を探してるんだけれど……この街では珍しい黒髪で13歳なんだけど、少し背が低くてすごく可愛らしい……いや美しい子なんだ。しらないかい?」


可愛らしい?美しい?私じゃないな。

誰を探してるんだろう?

もしかしてここにいない人で可愛いのって鈴沢さんかな?

でもたしか鈴沢さんは金髪……染めたのかな?


考えたけど誰かわからないので、首を振っておいた。

それに今のうちに今のクラスメイト達の状態を知っておこうと鑑定してみた。

===========

名前 : 飛鳥井 連

レベル : 56

クラス : 人間

年齢 : 14

性別 : 男

状態 : 【良好】

職業 : 勇者

称号:英雄

HP : 5500 / 5500

SP : 5500 / 5500

力 : 146+10

体力 : 129+11

器用 : 82

速さ : 146+8

知性 : 50

運 : 155

スキル :

【バスタースラッシュ】【ダブルスラッシュ】

【イージスの盾】【勇者の礎】

【奥義:ファイナルアタック】

===========


うわーっなにこれ?すごい強くなってる……。レベルも高いし。これが英雄の力なのかな?本当に切られたら私は死んじゃう。


===========

名前 : 城島 麗華

レベル : 52

クラス : 人間

年齢 : 14

性別 : 女

状態 : 【良好】

職業 : 勇者

称号:剣聖

HP : 5200 / 5200

SP : 3200 / 3200

力 : 151+12

体力 : 60+15

器用 : 132+10

速さ : 220+12

知性 : 40

運 : 50

スキル :

【一閃】【薙払】

【一騎当千】【剣聖の極み】

【奥義:天剣必罰】

===========


……うう。城島さんもすごいね……。なんなの私の酷さ。ってこれはちゃんとお城で訓練受けていたってことだよね。みんな頑張ったんだ。


===========

名前 : 三菱 麗奈

レベル : 30

クラス : 人間

年齢 : 14

性別 : 女

状態 : 【良好】

職業 : 勇者

称号:聖女

HP :500 / 500

SP : 32000 / 32000

力 : 5

体力 : 20

器用 : 99

速さ : 10

知性 : 358+300

運 : 898+12

スキル :

【ヒール】【エリアヒール】

【ブレス】【キュア】

【奥義:リザレクション】

===========


もうこの人だけ別格なんじゃないの?数値の桁が違うし。+補正は装備かな?聖女だけあって良いもの貰ったんだろうね。相変わらずにこにこしているけど何考えてるかわからない。前は優しいなって思ってたけど、異世界に来てからちょっと話したくない。


===========

名前 : 水澤 絵里

レベル : 45

クラス : 人間

年齢 : 13

性別 : 女

状態 : 【良好】

職業 : 勇者

称号:中級魔術師

HP :680 / 680

SP : 1280 / 1280

力 : 5

体力 : 20

器用 : 80+10

速さ : 10

知性 : 85+10

運 : 20+12

スキル :

【ファイアボール】【ファイアランス】

【アクア】【リフレッシュ】

【生活魔法】【調合】【鑑定】

>>

===========


あれ……この子は普通?ほかの3人が異常なだけかな。といっても私よりはるか天上であることは確かなのだけれど。もともと地味な子だったはず。大人しくて今も会話にも入ってこない。この子は奥義はないけど、スキルが多いし私と同じで早生まれかな?

それより気になるマークが……。

これに集中すればいいのかな?



(【詳細】)








===========

名前 : 水澤 絵里

レベル : 45(+1800)

クラス : 人間(上級認識阻害中)

年齢 : 13

性別 : 女

状態 : 【良好】

職業 : 勇者(上級認識阻害中)

称号:中級魔術師(上級認識阻害中)

HP :680 / 680(上級認識阻害中)

SP : 1280 / 1280(上級認識阻害中)

力 : 5(上級認識阻害中)

体力 : 20(上級認識阻害中)

器用 : 80+10(上級認識阻害中)

速さ : 10(上級認識阻害中)

知性 : 85+10(上級認識阻害中)

運 : 20+12(上級認識阻害中)

スキル :

【ファイアボール】【ファイアランス】

【アクア】【リフレッシュ】

【生活魔法】【調合】【鑑定】

>>

【支配】【強欲】【強権】【上級認識阻害】

【隠匿】【即死】【禁忌】

【空間転移】【全状態異常】

【時間停止】【アイテムストレージ】

【モンスターテイム:スルト 】

【絶対防御】【ネクロマンシー】

【限界突破】【ブラックホール】

【獲得経験値1000倍】

【アカシャ禁書2】

===========




……う……そ……やばぃ……。

この子が、いわゆる【主人公】だ……。


……ポタ……ポタ




英雄なんてモブだっていうぐらいの、【チート】だ……。

おそらく気に食わないことがあったら真っ先に殺される……。

ちょっとこの子がくしゃみをしただけで私は殺される……。

【詳細】でも多くの情報がスキルで阻害されて見れない。


LVが1845?スキルも全てを覆して蹂躙できる程の性能。

私まだLV3なんだけど……。

ラノベの主人公10人ぐらいを合成した人を見てるようだ……。



それに【アカシャ禁書】シリーズも持ってる。

図書室で?それとも別の場所?王位継承についてどう思ってるかで、対応が変わりそう。

肯定的なら私を生かすはず。否定的なら私を真っ先に殺すはず。この子は詳細鑑定はもってないから、私が持っているかどうかはわからないはずなので、すぐに行動に移してくることは無いと思う。でも……いや絶対気づかれてはいけない。

私は漏らさないように細心の注意をはらって彼らが過ぎ去るのを待った。


「ありがとう。では失礼します」

飛鳥井くん、城島さん、三菱さんの3人はそのまま去ろうとしてたけど、水澤さんはこちらをしばらくじっと見ていた……。

私もペコリと挨拶してその場を後にした……。






ううー見なきゃよかった……。

知らないほうが幸せってこのことだよ……。

【鑑定】持ちだったからステータスは見られたと思う。

でも私のステータスを見られても、石コロぐらいの認識だよねきっと。

もう急いで街を出よう。嫌な予感がする……。



はぁー……もう大丈夫かな。


すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ(息を吸って)。





やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい。

なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?





英雄なんて気にならなくなるぐらい、水澤さんがやばかった。

あのスキル一つでも持ってたらラノベ主人公伝説が生まれるよ……。

それを沢山もってるなんて……。

ラノベ主人公って他人からみたら恐怖の魔人でしかないね。今実感した。



あと、【アカシャ禁書】の一つを私がもってるっていうのは、いずれ対決を免れないんじゃ……。




あ!?……もっと最悪なことに気が付いた……。

それは彼女の性格だ……。


二見くんと幼馴染だったはず。

普段は大人しくて地味なんだけど、不良の二見くんのことになると、あらゆることを無視して突っ走る。

普段から露骨に二見くんに「だけ」媚びを売ってたはず。

今は何か目的があって集団に身を潜めてるけど、もし誰かが二見くんに擦り傷でも怪我させちゃったら世界が滅ぶんじゃ……あわわ。


……人間の狡猾さと厭らしさをもった、魔王より遥か上の生き物。


それが彼女だ。






ちょろろろ……。


あっ……さっきは我慢したけど、結局ちょっと漏らしちゃった……。

ううぅ……怖い。主人公怖い。

でも今は私はただの石ころ。何の認識もされてないんじゃない?

気にしないようにしよう……。


ただでさえ奴隷()なんだから目の間の生活を何とかしなきゃ。

世界なんて構ってられない。

世界と友達なら友達だ。

守るのは仲良くなった友達だけで精一杯だ。

といっても片手で数える程度しかいないんだけどね。





そして東門ではやっぱりギルドカードの提示を求められた。

うあー、メラさんがいなかったら出れなかったんだ……。

ありがとう……メラさん。ついでにガンツさんも。



無事門も出られたし、しばらくはのんびり旅をしよう。

東は港町までちゃんと道が整備されてるって話だし、たぶん楽な道のはず。

問題は私の体力だね。途中で馬車に乗せてくれる人いないかな?

あと友達もほしい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る