エピローグ

 噂はすぐに村に駆け巡り、結婚とはと兄に説教受けたりしたけれど、初夜も迎えていないお兄ちゃんに言われてもピンとくるものじゃなかった。って言うか二十四時間受け付けのシャーマンと結婚して子作りする暇とかあるんだろうか。先代のおじーちゃんも独り者だったし、やっぱりテントからいちょべたした雰囲気が出てたら入りづらいだろう。急患でも。それはよろしくないけれど、血は繋いで行ってもらわなきゃなあ。特に猫の民と龍の民なんて面白すぎるから是非ハーフが見たい。ハーフって言うかダブルって言うか。歯が生えたら牙ばっかりで授乳大変そうだな。でもそれは私も通る道だろう。いざとなったら哺乳瓶で。となると取り合いが発生しないよう、お兄ちゃんとは時期ずらして子供産まないとな。まだ十六歳なのに二十歳以降の心配をしている私は、結局王道さんが好きなんだろう。砂漠の孤独の中、ニカッと笑って大丈夫だと言ってくれた人だ。おまけに命の恩人でもある。私にも、お兄ちゃんにも、今はもういない老龍にも。

 と、ぼーっとしてると若い龍に水を掛けられた。染め物をしている最中だった、危ない危ない。あの人のためのベストだ。布から染めて、一針一針仕立てよう。濃く色の出た龍のうろこ模様、私の手のも濃くなっていくばっかりだ。私は染色師として、あの人は教師として、生きて行くのだ。となるとパオを出るのは私か。王道さんのパオにお引越ししなきゃ。断捨離を進めよう、いつかの為に。今じゃないいつかの為に。

 そしたら私たち、もう一度天まで上るのよ。

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もう一度天まで ~龍の一族探訪記~ ぜろ @illness24

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