希望

「石川か」

僕はずいぶんと雰囲気の変った、

中学校の同級生を見ている。

「キボウだよな」

「ずいぶん地味になったじゃないか」

僕と同じように、

彼女の名前を、文字通り「キボウ」と読む奴は稀だ。

大抵は「ノゾミ」と読む。

「覚えてくれてたんだ」

希望は微笑みながら僕の隣に座った。

カフェオレが置いてない方の。

「不登校のままだよ」

「わかるよ。あのダサいブレザー着てないから」

「ダサくて悪かったな」

「気に入ってるの」

「気に入ってねえよ」

「でも、それで不登校になったわけじゃない」

「あたし、もしそうなら、コッキ君尊敬してた」

ほんの少しだけ、昔を思い出している。

こうゆう奴だった。

「お前のところの、制服は可愛いな」

「どこだか知らんけど」

「可愛いでしょう。聖心女学館よ」

「そうか?でも、あそこはもう少しシックでクラシカルじゃなかったか」

「良く知ってるね」

希望が立ち上がる。

「共栄女子だよ」

「そこは知らない」

「まあ、どうでもいいけど」

「そうだね」

「今日はサボり」

「違うよ、これからちょっと用事があるの」

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