雨上がりの空に
阿紋
再会
季節外れの雨が続いている。
きれいに晴れた空を見上げながら、
まだ湿り気の残った道を歩いている。
陸上競技場の外縁につくられた公園には
人がまばらに歩いている。
ジョギングコースを走る人も少ない。
まあ、平日なんだから当たり前か。
僕はベンチの湿り気を手で確認して、
いつものベンチに座り、
コンビニで買ったウインナーパンの袋を開ける。
細長い楕円の平たいパンの上に、
マヨネーズの川が流れ、
ウインナーが浮いている。
パンを一口かじる前に、
ペットボトルのカフェオレのふたを開けて、自分のわきに置く。
「こぼれますよ」
パンを端から一口食べようとしたとき、
知らない制服を着た女子高生が、
僕の前に立ち、僕を覗き込むように見ていた。
「フタは閉めておいた方が」
僕は彼女を無視して、
パンを食べ、カフェオレを飲んだ。
そして、ペットボトルにフタをねじ込む。
どうだい、これでいいんだろう。
そう思いながら、女子高生の顔を見る。
こいつ、どこかで見たことがあるぞ。
「やっと気づいたみたいね、コッキ君」
世の中にはいろんな奴がいるけれど、
親が気まぐれでつけた「克己」という名前を
正確に「コッキ」と読む人間には会ったことがない。
10人中10人、100人中100人、
「カツミ」もしくは「カツキ」と読む。
まあ、「カツキ」はかなりの少数派だけれど。
「せっかく有名進学校に入ったのに、不登校になったって聞いたけど」
「元気そうだね」
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