コミック2巻発売記念SS



 すっかり見事な牧場と化した我が家であるが、野菜の他に果樹園的なものもある。

 その一画で、ラナはとあるものを育てていた……。

「これが……パンノミなのね……」

 とてもしみじみと木から採集したそれこそ、この国に限らず多くの国で主食として食べられているパンノミ。

 かなり大きく、楕円形の形をしている。

 これの中身を長方形に切り出したものが店に売られる『パン』だ。

 ラナがなにを思ってこの『パンノミ』を育ててきたのかはわからないが、「何事も頭ごなしに否定するわけにはいかない」という信条かららしい。

 なにより、ラナがもたらした小麦パンは、パンノミを育てるパンノミ農家に、大打撃を与えるだろう。

「うーん……」

「どうしたの」

「実際育ててみて思ったけど、味はともかく非常食としては確かに超優秀よね、これ」

「そうだね」

『緑竜セルジジオス』に非常食とか、備えておく必要はない気がするけれど。

 そう言うと、「そういうことじゃないのよ」と言われてしまう。

「それに、これはこれで別な料理に使えそうじゃない?」

「そう?」

「食感はパイナップルに似て繊維質だけど、味はうっすーーーいさつまいもっぽいから……確かに焼くとそれなりに美味しいけど……さつまいも……大学芋とか、スープにしてみたら需要は変わらないんじゃないかしら? いえ、主食として食べられてるんだから……」

 と、ぶつぶつ始まってしまった。

 まあ、俺としてもパンノミは長年食べてきたものだから、たまーに食べたくはなる。

 それを知ってか知らずかラナが突然「そうだわ!」と顔を上げてパンノミ持って家の中に走っていく。

 後ろについていって、しばらく観察していると、細かく刻んだパンノミが皿に盛られ、横に牛乳?

「ふふふ、我ながらいいものができたわ」

「な、なにこれ」

「主食として食べられてたんだから、シリアルにしたらどうかと思ったの! こうやって細かく刻んだものに乾燥フルーツを混ぜて、牛乳に浸して……はい!」

「は、はい」

 食べろと。

 ドヤ顔可愛いので言う通りに食べてみると……うーん?

「複雑な食感? 不味くはないけど」

「そうよねー、乾燥させてカリカリ食感にしたら美味しいと思うのよ」

「えぇ……」

 さては味見済みだな?

 けれど、ちゃんと「どういうものが完成品なのか」は、すでに決まってるっぽい。

 ならばラナのことだ、すぐにおいしい新商品が出来上がることだろう。

「ふふふ、見てなさいよ……パンノキ農家にシリアルを普及させて、おいしい朝食の顔にして差し上げるわ! オーッホッホッホッホッホッホ!」

「わあーたのしみだなー」


 完成品は実際美味しかったし、パンノミの需要を増大させた。

 まあ、それも小麦パンが普及すれば低下していくだろうけど。

 いやはや、さすがラナである。

 惚れ直しました。



********


原作1巻重版しました!

皆様の応援のおかげです、ありがとうございます!!!


原作3巻も8月6日(電子書籍版は8月20日配信です)発売!


合わせてよろしくお願いしますー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る