コミック1巻発売記念SS

『コミック一巻発売記念SS』

※ちょっと早いバレンタインネタ


 うちの奥さんは甘いものが好きだ。

 俺はあんまり得意ではないので、彼女が幸せそうに甘いもの食べるのを見てるだけでいい。

『黒竜ブラクジリオス』とご縁ができたことで、格段にチョコレートが入手しやすくなった。

 おかげさまで最近うちの奥さんはチョコレート菓子に凝っている。

 ……というか。

「フラン、これはどうかしら!」

「ええ、と……これは?」

「ふふふ……チョコレートチップマフィンよ!」

「ほ、ほほう……?」

 なんか小さなつぶつぶがたくさん入ってるマフィンを手渡された。

 だが俺としては、キッチン横の木箱の中身が気になる。

 ……カカオである。

 うちの奥さん、カカオからチョコレート作り始めてない? 大丈夫? さすがにそれはやばくない?

 まあ、さすがにチョコレートチップとやらは既製品みたいだけど。

「いただきます。……もぐ……」

「どう!?」

「うん、あんまり甘くなくて美味しい」

「でしょう!? ……ふむふむ、チョコレートチップのマフィンは好感触、と」

「それはなにメモなの?」

「え!? あ、こ、これはそのー……ほらあれよ、フランみたいに甘いものが苦手な人にも、カフェメニューを楽しんでもらえるように、ね! し、試作よ、試作!」

「ふーん、なるほど〜」

 相変わらずうちの奥さんは勤勉である。

 偉いねぇ〜。

「まあ、それも兼ねて、だけど」

「ん? なに?」

「なんでもないわ。次も試食お願いね!」

「ん? うん」

 ラナの作るものならなんでも食べますとも。

 とは、まあ、あえて口にはしないけれども。

「あ、ついでだからこれも試食してくれない?」

「そ、それは?」

 ボウルでかき混ぜてたっぽいものを差し出されたが、ついでというにはなんとなくやばそうな気配を感じる。

 しかし「やだー、そっちじゃないわよ」と言われ、差し出されたのは黒いつぶつぶ。

 な、なんぞやこれ。

「マフィンに入ってるチョコレートチップよ!」

「チョコレートチップから作ってたの?」

「っていうかチョコレートから作ってるわ! レシピ教わったら作りたくなるものじゃない?」

 そうか?

 カカオから作ってみようとは思わんのでは?

 ましてカカオからチョコレートってレシピというより作業工程では?

「こっちが甘さ強め。こっちがビター!」

「…………」

 恐る恐る一粒ずつ食べてみる。

 あ、やっぱりビターの方が美味しい……。

「あとこっちが超ビター」

「ちょ、超ビター?」

「ほとんど砂糖使ってないの! ど、どう? フランはどれが一番好き?」

 なんかワクワクされながら聞かれたので、その超ビターも一粒口に入れる。

 うーーーん、これは…………なんていうか……。

「ビターが一番美味しかったかな」

「あ、やっぱり? じゃあこの二つを採用ね」

「うん、それがいいと思うよ」


 ……超ビター……アレは苦い粉の塊でした。

 



*******

「追放悪役令嬢の旦那様」

マンガParkさんで大好評連載中のコミカライズ版が本日2021年1月29日に第1巻に発売となりましたー!

原作1巻2巻は発売中ですので、合わせてどうぞよろしくお願いします!!


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こちらは古森全編書き下ろしです!

活動報告で語っている小ネタをふんだんに盛り込んでいるので、古森のなろうの活動報告を読んだ方は「によっ」てなります。

古森の性癖が詰まってるのでこちらもよろしくお願いしまーす!!

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