ホットココア【2巻発売記念SS】

 

「きっついっ!」


 と、叫ばずにはいられない。

 なにこれしんどいきつい無理ー!


「雪かきってこんなしんどかったのね……」


 畜舎の屋根の雪下ろしを終わらせて、いざ我が家からアーチ門のところまでの道の雪かきを始めて三分。

 俺は早くも叫んでいた。

 それにラナもスコップに顎を乗せて呟く。

 いや、本当に。

 このあと自宅の屋根の雪も降ろさなきゃいけないと思うと……もう竜爪使っちゃおうかな……。

 でもうっかり屋根傷つけたら洒落にならないしな……。


「ラナは無理しなくていいよ?」

「だって雪かきしないと、牧場カフェにお客さんが来ないし、ファーラたちもうちに遊びに来れないじゃない。あーん、除雪機みたいなのがあればいいのにー!」


 出た、ラナ語。

 正確にはラナの前世の“なにか”。


「除雪機って?」

「え? あー、なんかこう、くぐーん、って雪を吸い込んでどぱーって吐き出す感じの機械……あ、フラン、竜石道具で作れたりしない!?」

「こうなる流れな気はしてた。そしてそれはとても賛成。ちょっと絵に描いて教えてくれる?」

「もちろん!」


 というわけで、一度家に戻ってラナに『除雪機』のざっくりとしたイラストを描いてもらう。

 下の方に吸い込み口のようなものがあるのか、とりあえず雪を吸って煙突のような部分から吐き出し、道の脇に吹っ飛ばすらしい。

 なるほど、便利。

 これなら冬の時期はどの国でも重宝しそう。

 つまり売れそう。

 でも……。


「この大きさのものを今から作るとなると……」

「そ、そうよねー。今日中には無理よねー」

「ん?」


 さりげなく差し出されたのはココア?

 ラナのにはなにやら白いものが浮かんでいる。


「あ、フランのにはお砂糖入れてないからあんまり甘くないわよ」

「あ、うん。じゃあラナのにはなにが入ってるの?」

「これ? これはマシュマロ!」

「ココアに?」

「マシュマロココアよ。前世ではちょっと憧れてたのよね、ココアにマシュマロ入れるの。やる機会なかったけど……」


 というわけで試してみたらしい。

 甘いココアにさらに甘いマシュマロを入れるなんて、と俺には考えもつかないメニューである。

 甘党のあくなき挑戦、本当すご。


「どう?」

「甘い!」


 シンプルで分かりやす〜い。


「フランも試してみる? マシュマロならそんなに甘くないし」

「そうだな……じゃあ」

「はい」


 紙袋の中に入っていたマシュマロを、俺のカップの中に入れてくれる。

 かなりじわじわ、消えるようにココアに溶けていく。


「本当にほんわり甘くなるね」

「あったまるわ〜」

「よーし、なんか頑張れそうな気がしてきた。ちょっと除雪機の道具作ってみる」

「うん、フラン頑張ってね! 夕飯は私が作るわ!」


 なお、除雪機は無事にレグルスに大喜びされ、街道の雪を除雪できるレベルの高いやつも作ることになりましたとさ。



********

「追放悪役令嬢の旦那様」2巻の紙と電子書籍版の発売日記念に書いたSSでした。


2巻には書き下ろしが1本。

帯裏のQRコード特典は6本立て。

ページ数的にweb版から削ることになったものを加筆修正したものや、書き下ろしです。

なんか30,000文字超えました。へへ。


続刊に繋がりますので、ぜひお買い上げよろしくお願いしま〜す!


またマンガParkさんで大好評連載中のコミカライズ版は来年2021年1月29日に第1巻が発売されることとなりました!

合わせてどうぞよろしくお願いします!!


あと「追放〜」関係ないんですけど来年2月にベリーズファンタジーさんから古森初の全編書き下ろしが刊行されることになったので、予約開始されたらよろしくお願いします。


やだー、めっちゃ宣伝ばっかりになっちゃったー!

まだ発表できてない諸々とかまだあるんですけどね!

「言っていいよ」って言われたら活動報告でご報告しますねー!


あとなんだっけ、なんか下の方に星のマークの評価ボタンあるらしいのでもしよかったらよろしくお願いします!(どこだ?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る