『エンジュの町』(没特典SS)



『緑竜セルジジオス』、『エンジュの町』は最初の町『エクシの町』よりボックスの馬車で半日かかる。

 直線距離ならば三時間ほどでたどり着くのだが、二つの大きな森を迂回する形で道があるため時間がかかってしまうのだ。

 一応この辺りを治める領主の本宅がある町なので辺境にしては規模の大きな町であり、主に隣国『黒竜ブラクジリオス』との交易拠点として栄えている。す

 故郷、『青竜アルセジオス』から追放された俺とエラーナ嬢は、ようやく本来の目的地であったこの町にたどり着いた。

 ここいらを治める領主……ドゥルトーニル家は俺の遠縁で、距離的にも『青竜アルセジオス』からほど近い。

 行き先を考えた時、真っ先にここが浮かんだのはドゥルトーニル家の人たちの人柄もある。

 なにより、エラーナ嬢の髪色と瞳の色は『緑竜セルジジオス』向きだった。

 この国では『緑色』が吉色とされている。

 案の定、翌朝『エンジュの町』の散策に出かけてみると面白い事が起きた。

「よう、姉ちゃん! 見かけない顔だが観光かい?」

「いえ、これからこちらにお世話になる予定です」

「おお! そいつぁ幸先いい! これ持ってきな!」

「え? あ、ありがとうございます?」

「お姉ちゃん、これもあげるよ! うちにも寄ってっとくれ」

「へ!?」

 などという事が数回……。

 市を歩けばあっという間にエラーナ嬢の腕の中は食べ物や土産物でいっぱいになる。

 それを少し預かって、食べられる物はその場で食べる事を勧めた。

「い、一体どうなっているの? こんなに親切にしてもらう意味が分からないのだけれど」

「君が美人だからじゃない?」

 九割ほど本気で言ったのだが、俺の容姿が軽薄に見えるせいなのか睨まれてしまう。

 ひどいなぁ、俺は割と本心で言ってるのに。

「けれど、思っていたより活気もあるし人も優しいし、いい国ね。なんだかやっていけそうな気がしてきたわ」

「それは良かった。他にも回る?」

「そうね!」

 どうやら町どころか国ごと気に入ってくれそうである。

 町の一つ二つでスケールがでかい。

 その器のデカさに惚れ直す。

 それに、なんだかんだ市場を見ながらはしゃぐ姿は……とても愛らしい。

 学園にいた頃の堅苦しいイメージもなく、無邪気に笑っていて本当はこんな人だったのか、という発見をした気分。

 いや、可愛すぎではなかろうか。

 俺明日死ぬんじゃないの。

「お! そこのお姉ちゃん! 名物の肉厚キノコの串焼きは試したかい!? 一本やるから寄ってきな!」

「ひ、ひえ……」

 ……うん、まあ、でも……とりあえずお腹がパンクする前に帰ろう。




***


没になった特典SS。供養。

ちなみに「とらのあなで特典付けられる事になったので3000文字分書いてください、○○日まで」って言われた時は「え? ○○日? 締切すぎてない? 日付が5日前? お主?」ってなったのは内緒です。※担当さんの勘違いでした。

そしてそのあと「文字数削ってください」「ふぁ? 3000文字ですよね?(一時間で1000文字書き足した古森)」「すみません、ページ設定したら2ページ多くなって……」


書き足した1000文字丸削りした。

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