閑話レスト公爵家のアランドル

私の名前はアランドル·レスト。

レスト公爵家の長男。

まあ、家督を継ぐ気はないんだけどね。


「アランドルお兄様!」


「クリスティ、どうしたの?」


「少しこちらに来て欲しいのだけど……」


「分かったよ。少し待ってて。」


妹のクリスティンは絶世の美少女。

なんか、僕は兄弟の中で1番好かれているみたいだし、長男だからという理由で父上から夜会のエスコートも頼まれているので、長男も悪くは無いかなと思っている。


「待たせてごめん。なにかするのかい?」


「私に着いてきてね!」


連れていかれたところは闇の森の入口。


「クリスティ、こっちは来ちゃだめって父上に言われているだろう?」


「大丈夫よ。全然怖くないもの。」


可愛い妹が言うのなら仕方ない。

森に1歩足を踏み入れると……


「え?」


咲き乱れる花と、青々とした若葉の生い茂った木々。

ここが闇の森なんて嘘だろうとしか言いようがない。


「あ、ミニ!こっちの人?私のお兄様よ。」


何故か分からないが、クリスティンがネズミと話している。

どういう原理だろう……

やがて、クリスティンは1人の青年の前に私を連れてきた。


「ああ、ありがとうジュリア。」


「ううん、どういたしまして、ジャン♡♡」


ん?ジュリア?

それは森の神王妃の敬称じゃないか?

それに、ジャンと言うと森の神王だし……


「はじめまして、と言うとおかしいな。この姿で会うのは初めてだから、はじめましてだろうか。俺の名前はジャン·ジャック·バジル·セルヴィール·セルリオール·ウィルフリーズア。この森の神王だ。」


「バジル·セルヴィール…………?」


あの、口うるさい公爵家次男の名前じゃないか。

実は神王だったのか!


「クリスティンはなぜここに……?」


「ジュリアは森の神王妃だ………」


神王妃……神王の妻……

クリスティンはもう結婚してたのか!?

しかも私たちには秘密で!?


「証文書もあるぞ。」


ひらっと、バジルが紙切れを出した。

確かに証文書だ。

しかも!

陛下と聖妃様のサインが入ってる……


「そこで、お前に頼みがあるんだ。」


「えーっと?」


「いつも、お前がジュリアのエスコートをしていたな。」


「そうだけど?」


「これからの王宮での夜会は、妻を貰ったから、途中から闇の森の神王として出ないといけなくなった。だから、いつもジュリアをエスコートしているお前に……神王弟になって欲しい……」


神王弟?


「それって仕事ある?」


「全然な「ならやる」」


仕事ないなら別にやってもいいしね。


「でも、どうやってなるんだい?私はクリスティの兄だよ?」


「お前、婚約者いたか?」


「居ないよ」


「好きな人は?」


「それもいない。」


そう、私はモテないんだ……

なんでだろうな……(※ゆるふわし過ぎだからです。)


「なら、うちの義妹?はどうだ?」


「妹?君、妹いたのかい?」


「まあ………」


それは知らなかったな。

やっぱり、人狼の妹なら人狼なのかな?


「ルールーリア、ちょっと来てくれ!」


「はーい」


すると………

木の上に止まっていた青い鳥が、パタパタと飛んできた。

そして……私の目の前で一人の少女に変わった。

白銀色の髪に闇夜のような瞳。

そこには金の線が走っている。

青色のドレスを纏い、大きなリボンを背中に結んだ少女は、クリスティンと同い年だろうか?

可愛いな……


「ジャン、この人誰?」


「ジュリアの兄だ。気に入ったか?」


「すごくかっこいいわ。」


かっこいい……

初めて言われたかもしれない。


「で、なんの用?ジャン。」


「それは………」

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