第3話 「なぜ・・」

朝の出来事以外はいつどおり流れていった。


自分だけがいつもと違う一日を過ごしている、これが今の自分にピッタリな言葉だろう。


同時に、明日が楽しみで仕方がなかった。


「あんた、時計ばっかり見て何してるの。」


珍しく早起きをして時計ばかりに気をとられている僕を見て心配そうに母が言う。


「んーん、なんでもない。そろそろ行く!」


8時25分。


昨日と全く同じ時間だった。


気持ちとは裏腹になるべく昨日同じ歩幅で歩いた。


同じ時間に通れば必ずあの信号は赤信号。


また彼女に会える期待感だけを胸に、横断歩道にたどり着いた。


「・・・・・いない。」


思わず声に出していた。


------今考えると当然のことだ。


なぜあのときの自分はそこに彼女がいないかもしれないと考えなかったのだろう。


あのときの僕はかなしい運命に支配されていたのかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る